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連載コラム 11年前

元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 第5回 目指す方向性が一つになった時、チームは劇的に変わっていく

シリーズ:元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 text by 西村卓朗 photo by VONDS市原

ミスを恐れることで判断が遅れる

 メンタル的な部分でミスをしたくない、自分のところでボールを奪われたくないという心理が働くと、どうしても判断が遅れ、いい状態を逃し、結果チャンスになりづらい。つまりゴール前では自分達がやりたいことより、相手にとって怖いことが必要で、4分の4ではエゴイストにならなければいけないが、その部分の心理状態がこの試合の流れの中では明らかに足りなかった。

 それについて自分の場合は選手の表情や仕草、パスやドリブルのコースどりで判断する。相手にとって「怖さ」の要素が足りない時はそれだけをゲーム中に伝えるだけで、流れは意外に変わったりするもので、この試合も途中からそれを選手にはベンチ前から伝え続けた。だんだん流れも変わってきていたので、いずれ点は入る気がしていた。ハーフタイムにはこれといって大きな修正はせず、後半に入ることになった。今思えば、良くなってきているときこそ、安心せずに色々なことを伝えるべきだったと思う。

 後半早々の5分に思いよらない展開となる。ストッパーの選手がペナルティエリア内でシュートブロックのためにスライディングをするとシュートが手にあたりハンドでPKをとられ、一発退場。得点機会の阻止の判定は非常に難しいものがあるが、この判定は観に来てくれた知人も言っていたが、とても厳しい判定だった。

 PKもしっかり決められ、一人少ない人数で1点を追うことになった。応急処置的にボランチの秋葉をCBに下げて、交代を含めどのような決断をするか考えていたが、とにかく点をとるためには攻撃的にする必要があったので、選手の配置転換と交代のカードでいくつかの組み合わせを考えていた。

 初先発させた岩田を代え、ここ2試合で2ゴールをあげていた宮内を入れると前に向かう動きに勢いが出始めた。
最終的には左の西山をCBに持っていき、ボランチで展開力のある左利きの平木を左SBに、秋葉をワンボランチにして、中村を右、左に荒井という4-3-2という形にした。

 その後荒井に代え前節初出場のルーキー小川と次々に交代のカードを切っていくと何度か危ない形はあるものの、一人少なくなってからは相手の4分の3、4分の4のエリアで向かっていく姿勢が増え、相手にとっては怖い局面が多くなった。一人少なくなったことによって選手一人ひとりの運動量も上がったこともあり、チャンスが増えなんと同点、逆転と2-1と試合をひっくり返す。

 最後は相手の勢いに押され、ポストを2度も叩くも、なんとか粘り、逃げ切ることができた。

 試合後の総括の時には喉は枯れていて、選手にとっても、スタッフにとっても間違いなく今までで一番苦しい試合だった。

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