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連載コラム 10年前

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。なぜジエゴ・コスタはスペイン代表を選んだのか

ブラジルが材料を提供し、欧州が大きく儲ける

 ところが、今回のジエゴ・コスタは違う。

 彼はセレソンに二度招集されており、11月に行われる親善試合にもルイス・フェリッペ・スコラリは彼を招集すると明言していた。彼はそれを断ったのだ。

 ただ、ジエゴ・コスタにセレソンに忠誠を誓えというのも無理がある。そもそも彼はブラジル国内でプレーした経験がない。彼の才能を磨いたのは、欧州である。

 ブラジルの産業史を想起させる。

 ブラジルで砂糖きび栽培の次に盛んになったのはゴム栽培だった。アマゾン産エベア・ブラジエンシスというトウダイグサ科の植物がゴム質の乳液を出すことで知られていた。一九世紀末からダンロップが自動車用の空気入りタイヤを発明し、ブラジルではゴム景気が訪れた。アマゾンのマナウスにある、アマゾナス劇場には当時の狂乱の後が見て取れる。欧州全土から最高の材料が集められ、贅を尽くした造りとなっている。

 イギリス人がゴムの種子を持ち出し、アジアでの栽培に成功すると、ブラジルでのゴム景気は収束した。

 ゴム景気はブラジルに産業を残さなかった。富を手にした人間たちは欧州に邸宅を構え、遊興に費やした。金は欧州に還流されたのだ。

 ジエゴ・コスタの場合もブラジルは“原材料”を提供したにすぎない。材料を使って製品を作り、大きく儲けるのは欧州のクラブである。

【次週へ続く】

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