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香川真司 10年前

マンUのサッカーは本当に“つまらない”のか。香川が挑むフットボールの国の壁とは?

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

フットボールとサッカーの違い

 先週からこのコラムを始めたが、おかげさまでその反響は大きく、読者から様々な意見も寄せられている。好意的なものがほとんどで、書き手をしても非常に励みになるが、その中で、香川とマンチェスター・ユナイテッドのサッカーが「合わない」という意見も目立った。

 実は、その“香川と合わない”と日本人サッカーファンが考えるユナイテッドのスタイルこそ、これまで幾人もの日本人選手が挑戦して越えられなかったイングランドサッカーの壁だろう。

 僕には兄貴的な存在の編集者がいて、79年日本で開催されたワールドユースでアルゼンチン・ソ連の決勝戦を見たというという筋金入りのサッカーマニアであるが、先週僕が書いたコラムに対し、このようなメッセージを送って来てくれた。

「香川がつまらないユナイテッドに合わせるんじゃなくて、彼のプレーがユナイテッドのサッカーを変えることを期待したい。ルーニーとのコンビネーションには少し気配を感じる瞬間はあるが…」

 僕の兄貴分は「つまらない」とまで言ったが、確かにユナイテッドのサッカーは、日本のサッカー通が面白いと感じるものではないだろう。

 やはり日本人の場合は、南米、欧州ならスペインのような、スキルと連携のサッカーが好みだろう。高い技術と深いディテールを持つ、論理的にして効果的なサッカー。我々は緻密さを好む民族である。

 そうした視点から見ると、ユナイテッドのサッカーはフィジカル頼りで連携がなく、大雑把に見える。日本人の好みには合わない。

 しかし、我々からすると大味の肉弾戦サッカーこそ、いにしえの昔から受け継がれ、英国男子のDNAに深く刻み込まれた蹴球、すなわち『フットボール』なのである。このフットボールとサッカーの違いが、日本人選手を戸惑わせるのだ。

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