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香川真司 10年前

マンUのサッカーは本当に“つまらない”のか。香川が挑むフットボールの国の壁とは?

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

子ども同士でもパス交換ではなくタックル合戦

 ご存知のように、イングランドは近代サッカーの発祥国である。それがこの国のサッカーを特殊にしている。なぜなら、発祥国であるイングランドだけが、それ以前の“原始サッカー”の記憶を持つからだ。

 奇しくも今年はFA創立150周年に当たる。このエピソードはご存知の方も多いと思うが、1863年、12(一説には11)クラブの代表がロンドンのパブに集まり、統一ルールを作って、今のサッカーにつながる競技が始まった。

 この際、「手でボールを持ってゴールを目指してはいけない」というルールに猛反発したのがラグビー校の連中で、ここから中世の蹴球がサッカーとラグビーに枝分かれしていった。

 つまり、英国にはサッカーとラグビーが同じスポーツだった記憶がある。中世のフットボールは、思うに球技というより格闘技に近く、日本の喧嘩神輿のような感覚でプレーされていたのではないだろうか。

 僕にはイングリッシュの妻との間に生まれた15歳の男の子がいるが、ここは英国、当然のように彼が育つ過程で一緒にボールを蹴った。

 長男とボールを蹴りはじめると、近所の男の子達がすぐに集まってきた。そして始まるのがボールの奪い合いなのである。いきなりタックル合戦だ。

 普通、日本人の男2人にボールを渡せば、きっと少し離れて、ボールの蹴り合いをはじめるだろう。パスをし合う。しかし英国の男の子2人なら、ひとりがボールを持ち、ひとりがその足元へ滑り込む。芝のピッチがそこら中にあるというサッカー環境の違いもあると思うが、2人だけでもボールの奪い合いを始める。

 こういった英国の子供達の遊び方を見ても、この国のサッカーはボールの奪い合いが基本だということが分かる。もちろん、そこで必ず体と体の接触がある。つまり「ボールを奪おう」と身構える相手が常に対峙しているスタイルなのだ。

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