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香川真司 10年前

マンUのサッカーは本当に“つまらない”のか。香川が挑むフットボールの国の壁とは?

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

戸田和幸が戸惑った理由

 当然、物理的なスペースはない。戸田和幸選手は、2002年の日韓W杯で活躍後、翌2003年にトットナムに移籍したが、4試合の出場でイングランドを去った。

 当時のトットナム・コーチの話では、戸田には「スピード」がなかったという。しかしそれは、足の速さという単純なものではなく、プレーのスピードだった。

 ようするに、イングランドのスペースがないサッカーの中では、一瞬にして相手につめられる。そこで次のプレーを瞬時に決めなければならない。

 戸田の場合、あったと思ったスペースが瞬く間になくなるサッカーで、ボールを持ってからの判断力が遅かったというのだ。イングランドでは子供の頃からスペースのないサッカーの中で育ってくるので、そうしたプレースピードはプロになる前に身に付いているのだという。

 ぶつかり合うことに慣れ、スペースがないことに慣れて、プレースピードが速い選手達。こういうサッカーでは、ボール持った状態も大切だが、持っていない時の動きも大事で、次の展開を読む感覚も必要だ。

 こういったイングランドの土壌から生まれた最高傑作はウェイン・ルーニーだろう。速くて強くて神出鬼没。どこにでもいて、どこからでも攻撃に加わる。さらにそのタッチとパス選択は天才的で、サッカーに関しては第六感が備わっているとしか思えない。つまらないユナイテッドの試合でも、常に目立つ存在となる選手だ。

 そして、天才ルーニーを支えるのは、紛れもなくその強さと運動量である。

 強さ速さスタミナ、そして上手さ。サッカー選手に求められる4資質をプレミアに求められる順番に並べたら、そうなる。どうしても肉体的な資質が上位に来る。

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