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連載コラム 10年前

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。菅原智の挑戦。果てしなき王国の魅力・その2

歓声が上がったインターセプト

 後半開始と同時に、菅原の名前が呼ばれ、観客席から歓声が上がった。

 この日本人はどんなプレーをするのだ、ブラジル人たちが好奇の目で見ていることを感じた。

 レオンの指示は相手中盤選手をきちんと抑えることだった。菅原はその選手を注意しながら、ボールを奪った。すると観客席から歓声があがった。インターセプトで、歓声が上がった経験は日本ではなかった。ブラジルではこうした地味なプレーも評価してくれるのだ。

 このインターセプトで菅原はうまく試合に入ることが出来た。ボールを持つと期待の声が上がるようになった。試合終了間際、観客は菅原の名前を連呼した。

 ここに来て良かった。鳥肌が立つ思いだった。試合は1対1の引き分けだったが、菅原はラジオ局によるMVPに選ばれた。日本人に対して大して期待をしていなかったことだろう。だから逆に評価が高くなった。それでも嬉しかった。商品は携帯電話だった。

 この試合の結果は日本のスポーツ紙にも配信された。写真付きで出ていると日本の両親から電話で教えられた。

 この試合で菅原に対するチーム内の視線が変わった。試合後の紅白戦ではAチームに入ることになった。Bチームの控え選手たちは菅原をこれまでになく激しく削ってきた。サントスで試合に出るというのはこうした緊張の中を勝ち抜くことなのだ。

 次の対戦相手はサンパウロ州で最も人気のあるコリンチャンスだった。

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