フットボールチャンネル

ブラジルの至宝、ネイマールはいかにしてサントスに才能を見出されたのか?

ブラジルサッカーの未来を背負うネイマール。天才と呼ぶに相応しい選手だが、王国では才能のある選手は珍しくない。その中から将来セレソンになれる選手はごくわずか。才能はいかにして磨かれたのか。最新号の『サッカー批評issue66』(双葉社、1月10日発売)では、“10番”の源泉、サントスを訪ねている。その一部を紹介する。

text by 田崎健太 photo by Kenzaburo Matsuoka

【サッカー批評issue66】掲載

決して恵まれていないサントスの設備

ブラジルの至宝、ネイマールはいかにしてサントスに才能を見出されたのか?
サントスFCはネイマール―ほかブラジル代表の中心選手を次々と生み出している【写真:松岡健三郎】

 育成という観点でサントスFCというクラブはブラジルでも際立っている。古くはペレ、最近ではロビーニョやジエゴ、そしてネイマール――ブラジル代表の中心選手を次々と生み出しているのだ。

 興味深いことに、サントスは決して設備が整ったクラブではない。例えば、経営基盤の安定したサンパウロFCはブラジル一の近代的なトレーニングセンターを保有している。また、巨大都市のサンパウロ市を中心としたブラジル全土から才能ある選手を集め、カカのような選手を生み出してきた。

 一方、サントスFCが本拠地とするサントス市は人口約43万人の中堅都市である。サントスFCのスタジアム、練習グラウンドなどのインフラは決して突出したものではない。

「サントスの海岸ではいつでもボールを蹴ることが出来る。ここの砂の質は固いのが特徴だ。きちんとボールを扱う技術が必要となってくる。それがサントスFCから優れた選手が出てくる理由の一つだろう」

 そう語るのは、下部組織でスカウトを務めるギリェルメ・ドス・パッソス・ゴメスである。

 ギリェルメはサントスFCの下部組織で育った。プロ契約の年代になった頃、怪我をしたこともあり、フットサルチームでプレーするようになった。4年前からサントスの下部組織で教えている。

 スタジアム『ビラ・ベルミーロ』にある部屋にはサントスに縁のある人間の名前がつけられている。ギリェルメたちの部屋の扉の上には『ビルギリオ・ピント・ジ・オリベイラ“ビルー”』と書かれた黒い鉄のプレートが打ち付けてある。

 ビルーはサントスの元ディフェンダーで、1935年にサンパウロ州選手権で初優勝した時の監督である。こうした細部にこのクラブの歴史へのこだわりを見つけることができる。

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top