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Jリーグ 10年前

鹿島アントラーズという環境―大岩剛が見てきた若き内田篤人―

text by 田中滋 photo by Kenzaburo Matsuoka

自分でステップアップできる力がある選手の共通点とは?

――シャルケに行ったのは指導者としての勉強も兼ねて行かれたんですか?

「ドイツだけじゃなくて他にもいろんなところをまわったんですけど、『あっちゃん、ちょっといい?』とお願いして行ってきました。スケジュールの都合で練習は見られませんでしたが、一泊させてもらって試合も観てきました。まあでも、日本に帰ってきたら必ず鹿島に来るしね。何しに来るんだというくらい来る(笑)」

――大岩さんは、名古屋に始まって、磐田、鹿島といくつものクラブを経験し、たくさんの選手を見てきたと思います。自分でステップアップできる力がある選手の共通点はなにかありますか?

「簡単に言えば“話を聞ける”“聞く耳を持っている”かどうかじゃないかと思います。言われたことをうまく咀嚼できる選手ですね。先輩や指導者に言われたことを全部が全部を聞くんじゃない。かと言って、かたくなに自分を持っているだけなのとも違う。確たるものを自分で持っているのはもちろんなんだけど、先輩とか尊敬している人、篤人の場合だと満男や大樹の名前を出したりしてますけれど、そういう人たちの話をしっかり聞けるかどうかだと思います。

 もっと言うと、本気で聞けるどうか。若い選手にときどきいるんですよ、『はい、はい』と言うだけで、本当は聞いてなかったりする選手が。聞く耳を持っている選手は、自分が成長するためになにをやらなければいけないのか、チームが勝つためになにをしなければいけないのかを聞けるんです。本気で先を考えてる奴は話を聞けるんですよね。本気で話を聞いているかどうかが、ステップアップしていく選手に共通していると思います。

 昔、ジュビロにいたときは高原(直泰)がそうでした。彼もボカに行ったりする選手でしたけど、当時のジュビロも中山(雅史)さんがいたし、名波(浩)もいたし、ハット(服部年宏)もいた。そういう先輩はやっぱりタカに言うんですよね。すごく言うし、要求もする。

 それに対して、タカも自分の意見は言うんですけど、先輩の言うことをしっかりやりながら、自分のこともやろうとしていた。そういう剥き出しにした向上心がタカにはありましたね。それは篤人には当てはまらないのかな(笑)。もちろん、彼の中にはあるんだろうけど、外から見るとほわんとしてるじゃないですか。

 でも、話を聞くという部分は同じだと思います。篤人の場合はアントラーズで、いろんな先輩の話を聞いてきた。その積み重ねがいまに至っていると思うから、彼のベースはたぶんそこにあると思います。その上でシャルケでいい経験をして、サッカーに対しての貪欲さも出てきたんじゃないですか」

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