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最下位相手にポゼッション45%、マタ加入も低調な“質”。64億円の投資でマンU監督に求められる“変化”

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Getty Images

ボール来ず。中盤まで下がるハメに

 ある意味それは香川がマンチェスター・ユナイテッド加入以来、「もっともっと」と言い続けていることと同じ気持ちなのではないだろうか。

 もっとボールが欲しい。もっと自分を信用して欲しい。もっと周りの選手に自分を見て欲しい。

 僕はこの試合でのマタのプレー、存在感があまりにも香川とかぶり、そのインタビューににじむ気持ちまで同じで驚いた。

 現時点でリーグ最下位に沈む、今季昇格組の格下カーディフを相手にボール支配率が45%。ボールを持たない、つながないマンチェスター・ユナイテッドのスタイルが浮き彫りになるデータだ。

 その中でマタがもがいていた。確かに、前半6分の先制点の起点になるサイドチェンジパスを出した。

 自慢の左足で、右サイドの深い位置から左サイドを走ったエブラに40メートルのパスをきっちり渡した。

 しかしそれも、1.5列目にいても全くボールが集まらないことで、中盤の底まで下がり、そこでやっと持たせてもらったボールを左サイドに飛ばした結果だった。

 これは本来ボランチのプレーだろう。1.5列目でファン・ペルシーをオペレート(操縦)し、隙あらば自らもゴールを決める魔術師のようなマタを期待したファンなら、なぜあの位置に小さなスペイン人が下がっているのか、不思議だったはずだ。

 前半はこの1点の後、カーディフがボールを支配する展開になり、マタの見せ場はほとんどなかった。

 後半も2点目を決めたヤングにパスを出したが、これは特に難しいパスではなく、ゴールはイングランド代表の個人技で奪ったものだった。

 左サイドでスペイン代表MFのパスを受けたヤングが、中央に切れ込んでズドン。ファーサイドのトップコーナーに美しい弧を描いて飛び込む、ものすごいシュートを決めた。

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