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運用資産10兆円、圧倒的な資金力が影響か。カタールのW杯をめぐる不正が追及されない理由

text by 植田路生 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

自国W杯、ペップと共に優勝を目指す

 カタールは地元にアスパイア・アカデミーという世界最高のトレーニング施設を用意し、自国の強化に努めている。アフリカ系のフィジカルに秀でた子どもを次々と帰化させてパスサッカーをさせているのだ。

 彼らは壮大な計画がある。田村氏がかつて『フットボールサミット第7回』に寄稿した原稿によれば、2022年W杯のときにはグアルディオラがカタールの監督を務め、バルセロナのようなサッカーで優勝する、というものだ。その原稿が書かれたのは2012年だったので、今の目標はバイエルン流に変わっているかもしれないが。

 果たしてその先に何を見ているのか。私はカタールがUEFA入りも視野にいれているのではないかと思っている。中東にはピークを過ぎたスター選手がやってくるが、金銭的な魅力以外に引きつける要素はない。

 加えて、欧州での“お買い物”に飽きがくるのではないか。近い将来、カタール資本のチームがチャンピオンズリーグで優勝したとして(その可能性は十分にある)、次のステップは金に糸目を付けない補強による勝利ではなく、自分たちが育てた選手たちでのビッグイヤー獲得だろう。

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バルサの胸には「カタール・ファウンデーション」の文字が【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 UEFAに入れば、今よりもずっと選手たちはカタールに来やすくなる。カタール国籍(法律上は)の選手と欧州の選手の混合チームによるCL参戦は彼らにとって次の欲求段階を満たすのに十分なように思える。

 地域の転籍はオーストラリアがAFCに、カザフスタンがUEFAに加盟したことで前例がある。UEFA、FIFAのトップと“懇意”であらば尚更動きやすい。

 バルセロナのユニフォームの胸には「カタール・ファウンデーション」の文字がある。設立者は前カタール国王のシェイク・ハマド・ビン・ハリーファ・アール=サーニーだ。もし将来、久保建英の獲得を希望されたとき、バルセロナは拒否できるだろうか。

 W杯開催は始まりに過ぎない。カタールの侵攻はじっくりと、しかし着実に進んでいる。誰もそれを止めることはできない。止める術は知っていても、もう止められないのだ。

【了】

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サッカー批評 ISSUE66

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