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22試合で22通りの布陣、無限の流動性。ペップ・バイエルンは本当に複雑なのか?

ペップ・バイエルンのサッカーは見ていて楽しい。だが、どこか“複雑”に思えなくもない。一つとして同じ布陣で戦うことなく、無限にポジションチェンジを繰り返す。複雑に思っても無理はないかもしれないが、彼らから発せられるのはシンプルなメッセージだ。

text by 本田千尋 photo by Ryota Harada

黄色のマーカーをひとつだけ置いたウォーミングアップ

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ジョゼップ・グアルディオラ監督【写真:原田亮太】

 ささやかなブーイングを受けながら、バイエルンのGK、トム・シュターケ、マヌエル・ノイアーがピッチに足を踏み入れ、試合開始前のウォーミングアップのためにゴール前へと向かう。

 2014年2月23日、ブンデスリーガ第22節、ハノーファー96は無人の野を駆けるように首位を独走するバイエルン・ミュンヘンをホームに迎え撃った。HDIアレーナの辺りを覆った空気は、緊迫したものではなく、どこか弛緩したものだった。バイエルンが相手では仕方がない、最強を一目見てみよう。ちょっとしたフェスティバルだ。

 バイエルン・ミュンヘンは試合前にどんなウォーミングアップを行っているのか。ポジションの意味を書き換えながら、相手を自陣に押し込んで、ゴールを陥れ続けるサッカーの源のカケラが、何か見つかるのではないか。

 バイエルンが試合前に行ったウォーミングアップは、ごくごくあっさりしたものだった。ペナルティエリア右側手前に、黄色のマーカーがひとつだけ置かれている。

 メニューと順番を簡単に記すと、以下のようになる。
1:ボールを使いながら、各々がジョギング。
2:ピッチに広く散らばって、2人1組になり対面パス。
3:GKを除く先発メンバーは輪になってストレッチ。ベンチメンバーはロンド(トリカゴ)。
4:GKを除く先発メンバーは黄色いマーカーの前に2列になって並び、シャトルラン。
5:ピッチに広く散らばって、2人1組になり対面パス。
6:ゴール前でシュート練習。
7:GKを除く先発メンバーはベンチ前で2列になってシャトルラン。
8:終了。

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