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Jリーグ 10年前

虚無感に包まれた埼玉スタジアム。無観客試合によって再認識したJリーグの魅力と進むべき道

text by 桑村健太 photo by Asuka Kudo / Football Channel

サッカー界に問題提起をした男性サポーターの英断

 昨シーズンのJ1の劇的な結末、フォルランの来日、迫り来るW杯――。そう、今のJリーグには世間の関心を集めるだけの材料が十二分に揃っており、彼らをこちらの世界にいざなう絶好のチャンスでもあったのだ。

 ただでさえJリーグは新規観客の動員に手を焼いている。そういった潜在的なファン層に対して、今回の事件が目に見えない部分で与えた影響は果てしなく大きいと言える。金額では計り知ることのできない、甚大なダメージをJリーグは被ったのである。まさに悲劇的な事件であった。

 不幸中の幸いだったのは、この横断幕を発見し現場の様子をいち早くTwitterに投稿した浦和サポーターの男性が、きわめて迅速で的確な対応を見せたことだ。この男性は、この横断幕を見るやいなや事の重大さを悟り、試合観戦もしないまま即座にクラブ職員に通報および抗議している。

 事件のあった8日は、浦和のホーム開幕戦であった。愛するクラブの勇姿を心待ちにしていたこの男性の目に、あの地獄のような光景が飛び込んできたのである。その時の失望感は、想像するだけでも胸が痛くなる。

 この男性は今回の一連の流れについてTwitterやブログ、またラジオ等で積極的に経過を発信しており、当事者としての使命を全うした。愛するクラブの中で起きた問題にも真正面からぶつかり、サッカー界に問題提起をしたこの男性の行動力に心から感謝の意を示したい。彼の臨機応変な対応がなければ、事態はより深刻化していたはずだ。

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