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45歳の早すぎる死、悲しみに包まれたスペイン。誰よりもバルサに尽くした男、ティト・ビラノバ

text by 山本美智子 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Rafa Huerta

バルサの進む道を自ら示し、旅立ったティト

 心の傷は簡単に癒えない。試合後に「今日はサッカーの話をするのは場違いだと思う」とマルティノ監督が記者会見で話したのも当然だった。選手はない気力を振り絞り、気力だけで戦ったのだ。そこに戦略などあろうはずもなかった。

 個人的に私もビラノバは、ファーガソン監督のようにバルサを長く率いる稀な監督になれるのではないかと期待していたこともあり、病に倒れたのは本当に残念だった。

 現在のバルサの下部組織で勤めている主要人物は、自らのポジションはビラノバの口利きで得たものだと語った。バルサが良くなることを目指して、彼はあらゆるレベルで自らにできる全てを行い、尽くしていたのだ。

 常にグアルディオラと比較され、選手としてグアルディオラのように成功しなかったからということで批判も浴びたティトだが、グアルディオラさえ達成できなかったリーグ戦での勝ち点100を達成したクラブ史上唯一の監督であり、グアルディオラの栄光自体、ビラノバなしには達成できなかったことは誰もが知っていた。

 バルサの進む道を自ら示し、旅立ったティトにバルトメウ会長は惜別のことばを送っている。

『あなたが常に望んでいたようにカンプノウのピッチの芝は完璧にしておくからね。安らかに眠ってください』と。

 きっと、ティトは天上からも、バルサを見守り続けていくことだろう。

【了】

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