フットボールチャンネル

45歳の早すぎる死、悲しみに包まれたスペイン。誰よりもバルサに尽くした男、ティト・ビラノバ

text by 山本美智子 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Rafa Huerta

涙を抑えることが出来なかったブスケッツ。恩師に捧げた勝利

20140430_bira
スタジアムに設けられた哀悼スペース【写真:Rafa Huerta】

 ティトの友人が5月の1週目にランチでもと声をかけたところ、ティトが「私にとって5月は余りにも遠い」とメッセージで答えていた話も後から知らされ、悲しいことに実際にティトは5月を迎えることなく旅立った。

 ティトが報道を避けたのも、自分のことでクラブや選手が一喜一憂するようなことがあってはならないと固く信じていたためだろう。

 スタジアムのメインスタンドには哀悼スペースが設けられ、日本でいうところの遺影が設置されたが、その遺影を前にした選手達は涙で目を腫らしていた。実際、日曜日に行なわれたビジャレアル戦では逆転勝利を手にしたものの、選手はお通夜そのものの顔をしていたし、試合開始の黙とう後セルジ(・ブスケッツ)は涙を抑えることができなかった。

 その状態で勝てたことがティトに対する何よりの餞別だと全員がわかっていただけに、メッシを始めとし、そのむき出しになった闘志は殺気立っていた。メッシが決勝弾を決め、ティトにそれを捧げたのは言うまでもない。

 メッシやセスク、ピケなどは14歳の時からビラノバの指導のもとバルサで学んで来たのだ。今季の始めは、まだビラノバがトップチームを率いる予定となっていたし、7月に再発した病気のためにベンチを離れざるを得なくなってから、まだ1年も過ぎていないのだ。

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top