フットボールチャンネル

45歳の早すぎる死、悲しみに包まれたスペイン。誰よりもバルサに尽くした男、ティト・ビラノバ

バルセロナの前監督、ティト・ビラノバ氏が4月25日に耳下腺腫瘍のため死去した。生前、ビラノバ氏はクラブのために自らの病状を公にすることを望まなかったという。その45歳という若すぎる死にはバルセロナのみならず、スペイン中が悲しみに包まれた。

text by 山本美智子 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Rafa Huerta

2年半に渡る闘病の末に死去。完全なる静寂に包まれたスタジアム

20140430_bar
ティト・ビラノバ【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 金曜日、FCバルセロナの元監督、ティト・ビラノバがこの世を去った。45歳であり、2年半に渡る耳下腺腫瘍との闘病の末に旅立った。月曜日20時(現地時間)から、バルセロナ市内の大聖堂で葬儀のミサが執り行われ、クラブ側が告知した三日間の服喪も28日で終わりを告げることとなる。

 週末の試合は、サッカーのリーグ戦のみならず、バスケット、テニスなどほかの競技でも試合前に彼への黙とうが捧げられ、ティト一色に染まった。試合前に黙とうを捧げるのは良くあることだが、通常スペインでは規定通り、1分間の黙とうが捧げられることはない。

 時間より短く切り上げることが大半であり、日本では考え難いだろうが、スタンドの観客も早く試合を始めるよう促し、スタンドから声を出して黙とうを遮ることが往々にしてある。

 だが、今週末に限っては1分間の黙とうが守られ、あちこちのスタジアムのバックスクリーンに流れるティトの映像に誰もが祈りを捧げ、黙とうの間スタジアムは完全なる静寂に包まれた。人々は、このようにティトへの敬意を示したのだった。

 滅私奉公という言葉がある。自らを省みず、公となる対象に尽くすことだ。個人主義がもてはやされ、誰もが匿名であっても各々のエゴを主張する時代だが、ティトの人生はまさにバルサという対象に尽くした滅私奉公そのものだった。病気が発覚し、最初の手術を受けた時、バルサのトップチームはチャンピオンズリーグの試合を行う寸前だった。

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top