サンフレッチェ広島のブレないマネジメントに迫る。“予算中位”でなぜ結果を出せるのか?

2014年05月01日(Thu)7時30分配信

text by 中野和也 photo Kenzaburo Matsuoka ,Yasuhiro Suzuki
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コンセプトに適した選手の「育成」に賭ける

サンフレッチェ広島のブレないマネジメントに迫る。“予算中位”でなぜ結果を出せるのか?
広島は掲げた理想を追求し、方向性に合った選手の育成に力を注いだ【写真:松岡健三郎】

 広島は掲げた理想を追求し、方向性に合った選手の育成に力を注いだ。「育成」にはお金も時間もかかる。優秀な素質を持った選手がプロで期待どおりに成長する保証はない。

 タイトルを総なめにした2003~04年の広島ユースが輩出した選手のうち、2012年の初優勝に貢献したのは高萩洋次郎と森脇良太だけ。この現実が、育成の難しさを証明している。短期的には、育成より補強に予算をかけた方が、てっとり早く結果が出る可能性が高いのだ。

 それでも、広島は「育成」に賭けた。目指す「主導権を握るサッカー」には、技術と知性に長け、走って戦える選手が必要。その方向性が明確だからこそ、森崎兄弟や高萩洋次郎、青山敏弘や清水航平、さらに駒野友一、柏木陽介、槙野智章、森脇良太ら、コンセプトに適合した選手たちが継続して成長してくる。

 もし彼らを全て移籍で獲得しようとすれば、予算はいくらあっても足りない。2006年に就任したミハイロ・ペトロヴィッチ監督が広島サッカーの基礎を築いたことは確かだが、彼の意図を実践できる人材が広島にそろっていたことを見過ごしてはいけない。

 2007年後半、主にカウンターによる失点を繰り返し、広島は敗戦を重ねた。12月8日、2度目のJ2降格が決定。サポーターの怒号と涙が交錯したホームスタジアムで、広島はクラブとしての覚悟を決める。

 降格した監督の続投決定。サポーターやメディアから散々な批判を受けたこの決断時、当時の久保允誉社長(現会長)は、こんな直感が走った。

「もしペトロヴィッチ監督を更迭すれば、選手たちも移籍する」

 経営者の直感は、当たっていた。後に可変型システムを創造する主人公となった森崎和幸は「もし監督に責任を負わせてクビにするなら、僕も(移籍を)考える」と発言。それほど、指揮官と選手たちは、強い絆でつながっていた。

 選手たちは、クラブが手塩にかけて育て上げた資産。なのに、降格という結果に流されて彼らを手放しては、育成にかけた時間や予算は全て無駄になる。

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