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実はPR戦略だったアウベスの“バナナを食べる”ジェスチャー。マーケティング会社が反差別へ込めた意図とは?

text by 永田到 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

アイデアはもともとネイマールを想定。華やかなイメージの裏で差別に苦しむ

 このロドゥッカ社でネイマールのPRに携わるグガ・ケッツァー氏が欧米の各メディアに語った内容をまとめると、おおよそ次の通りとなる。

「この(放り込まれたバナナを試合中に食べる)アイデアは、もともとネイマールを想定してのものだった。結果的にアウベスが実行に移すことになったが、当初のアイデア通りに機能した。

 行動を起こせば、それは発言以上に大きく伝わっていく。ジェスチャーは通訳を必要としないし、口コミが世界中に広がっていくのを我々は今目の当たりにしている。

 ネイマールは、沈黙することをよしとしなかった。人種差別に対して、彼自身が持つ影響力を活用することを望んでいた。

 ネイマールにとって、世界中にはびこる人種差別にサッカーファンの関心を向けるための一つの方法だった」(注釈:アグエロ等、他選手のアクションについては、ロドゥッカ社の関与はないとされている)

 今シーズン、ネイマールはスペインでモンキー・チャントを幾度となく耳にしている。耐えかねた彼が、父親をはじめとする周囲のサポートスタッフに何らかの対策を求めたのは、3月に行われたエスパニョール戦の後だった。

 華やかなイメージを持たれることも多いネイマールだが、その肌の色から、欧州では差別的行為に悩まされていた。過去に遡っても、2011年にエミレーツスタジアムで開催されたスコットランド代表対ブラジル代表の親善試合で、ドイツ人観客がバナナを放り投げるという事件が発生している。

 試合後のインタビューでネイマールは、「悲しい」という言葉を繰り返し、人種差別的行為を何度も嘆いていた。

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