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実はPR戦略だったアウベスの“バナナを食べる”ジェスチャー。マーケティング会社が反差別へ込めた意図とは?

text by 永田到 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

今回のアクションをどう評価すべきか?

 今回のアプローチがどの程度適切だったのかどうかは極めてセンシティブで、判断が分かれるところも確かにあるだろう。ただ少なくとも言えるのは、差別主義もユーモアの前では無意味なものになるということ、さらにいえばアウベスとネイマールの今回のアクションが、人種差別へ向けた対抗策に新たな息吹を吹き込んだということだ。

 どれだけ強固に抗議しても止むことのない差別に、数えきれない選手が不必要なエネルギーを消耗してきた。差別について声をあげて訴えかけるのも、我慢して耐え忍ぶのも、どちらもこの上なく大きなエネルギーを要するのだ。

 議論には多角的な視点が必要だが、最も重要視するべきなのは、「どうすれば差別を無くせるか(または減らせるか)」に尽きるだろう。こうした点において、二人が起こした今回のアクションにはやはり大きな賞賛が向けられるべきである。

 ネイマールが投稿した写真には、“weareallmonkeys”(僕達みんな猿だよ)というハッシュタグが添えられている。この点について前述のケッツァー氏は次のように述べている。

「偏見を打ち破るのに最もいい方法は、人種差別行為そのものを台無しにしてしまうことだ」

この先サッカー界における人種差別問題が大きく改善していくとするならば、アウベスとネイマールのアクションはその一里塚として、今後長きに渡って語り継がれていくはずだ。

【了】

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