フットボールチャンネル

日本代表 10年前

キプロスという選択。日本、強国のスタンスでW杯へ

毎回週替わりのテーマで日本サッカーについて語り合う『J論』。フットボールチャンネル出張版の手始めは、W杯の壮行試合となるキリンチャレンジカップ・キプロス戦(5月27日・埼玉)について、ちょっと違った視点からフォーカスしていく。今回はJ論編集長の川端暁彦が、この試合の位置付けとブラジルW杯における日本代表の「立ち位置」を考える。

text by 川端暁彦 photo by Getty Images

普段のサッカーを普通にする

 4年前、壮行試合の相手は韓国だった。

 タフで士気も高いチームを相手にしたゲームは、完敗に終わる。日本はその後もイングランド、コートジボワールといったW杯本大会に出場する強豪国とスパーリングを重ねた。これはオーソドックスな強化法だった。

 この時期に強国とぶつかるのは本大会のシミュレーションということに加え、この時期にしかできない相手だからというのもある。韓国はまた別だが、たとえばイングランドのような伝統国は率直に言って「余り強くない相手」を対戦相手としてチョイスしたがる。さらにアジアの国との対戦経験が少ないことから、この時期は好んでアジア勢と対戦したがる傾向もある。それを望めば、普段はなかなかできない相手と試合が組める。そういう時期でもあった。8年前のジーコジャパンが大会直前にドイツとぶつかったのも、このパターンだ。

 そして、今大会の日本はどうか。壮行試合の相手にはキプロスをチョイス。このあとの米国キャンプで対戦するのは、コスタリカとザンビア。W杯に出場しない国、あるいは出場するにしても決して強国とは言えないチームを選んでいるのが分かる。強国との試合は組みたくても組めなかったわけではなく、あえて胸を借りるような試合は組まないというスタンスだった。

 これは、強国の調整法だ。じっくりと自分たちのコンディションを調整し、その確認のために親善試合を行い、本番に備える。一方的に押し込まれる試合を体感して、W杯モードの戦術を仕上げていくという弱小国のスタンスではない。

 4年前は未完のチームをしばき上げるために強国との連戦を設け、突貫工事の守備的戦術を仕上げることに成功した。まさに弱小国のスタンスがポジティブに作用したわけだが、今回のチームについてザッケローニ監督はその道をとらない。攻撃的なサッカーでいくという言い方もされるが、個人的には「普段のサッカーを普通にしよう」というチームであると理解している。すでに完成の手ごたえを得ているそのサッカーをそのまま出すことが目的なので、W杯仕様の特殊な戦術を強国相手に試す必要もないということだ。また、意識せざるを得ない強敵相手とガチンコの戦いを展開することで、コンディションを崩すような形(8年前、ジーコジャパンのドイツ戦がそうだった)のは避けたいというのも率直なところだろう。

関連リンク

ザック曰く「簡単には勝たせてくれない」。キプロス代表は意外に強い!?
Jがアジアで勝つため『4つのプレミア化』を求む
日本サッカー界は、ACLを本気で獲る気があるのか?
J論とは?
Fチャンワールドカップ2014ブラジル大会特設ページ
遠藤保仁、W杯を語る。日本サッカーが手にした知性

【次ページ】その強国のスタンス
1 2

KANZENからのお知らせ

scroll top