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なんと選択肢は“7ヶ国”。無名の存在からついにW杯へ。マンU若手ヤヌザイの激動の一年

text by 桑村健太 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Asuka Kudo / Football Channel

ルーツではないイングランドも招集に興味

 アドナン・ヤヌザイはベルギー生まれの19歳である。“Januzaj”と書いて「ヤヌザイ」と読むが、マンチェスターの人の中には「ヤヌセイ」と呼ぶ人も少なくない。生年月日は1995年2月5日で、ちょうど日本代表の予備登録メンバーにも選出されたFW南野拓実と同じ世代にあたる。ちなみに、昨年7月に行われたプレシーズンマッチで来日しており、横浜F・マリノス戦とセレッソ大阪戦の2試合で出場経験がある。

 そんなヤヌザイの父親はコソボ系アルバニア人である。また、祖先の家系にも様々なルーツと居住経験があったことから、ベルギーやコソボ、アルバニア、セルビア、トルコ、クロアチアといった代表チームを選択できる境遇にあったという。

 さらには昨年、ヤヌザイの将来性に惚れ込んだイングランドサッカー協会(FA)は、将来的にヤヌザイをイングランド代表に招集する意思を明らかにした。FIFAの規約によれば、18歳以降に5年の居住経験があれば、その国の代表選手になるための資格が付与されるという(2018年W杯には間に合う計算)。こうしてヤヌザイには、7ヶ国の代表チームから熱い視線が送られるという、きわめて稀有な外部環境が整ったのだ。

 ヤヌザイの名前が英国中に広がったのは、昨年10月に行われたプレミアリーグの第7節サンダーランド戦だろう。ユナイテッドの選手として初先発を飾ったヤヌザイは、この試合で見事2ゴールを挙げる。特に2点目のボレーシュートは芸術点が高く、苦境のチームに勝ち点3をもたらしたことからも“シンデレラボーイ”として広く注目を集めることになった。

 結局ヤヌザイはプレミアリーグで27試合に出場し4得点を記録した。日本のマスメディアでは「香川真司のライバル」と紹介されることが多かったが、モイーズ政権下での序列はその香川を圧倒していたのが事実だ。

 その後もヤヌザイは試合を重ねるごとにその輝きを増し、チームメイトや指揮官から絶大な信頼を得ることに成功。そして、そうした活躍が世間へと知れわたるにつれ、彼の代表選択についても注目が集まるようになった。

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