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なんと選択肢は“7ヶ国”。無名の存在からついにW杯へ。マンU若手ヤヌザイの激動の一年

今季、マンチェスター・ユナイテッドで輝きを放ったヤヌザイ。香川とポジションを争ったことから名前を覚えている人も多いことだろう。実は、彼の出自は非常に特殊で複数の代表を選択することができた。その中で、彼が選んだのはベルギー。無名の若手はたった一年でW杯の切符を掴んだのだった。

text by 桑村健太 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Asuka Kudo / Football Channel

7ヶ国の選択肢があったヤヌザイ

なんと選択肢は“7ヶ国”。無名の存在からついにW杯へ。マンU若手ヤヌザイの激動の一年
アドナン・ヤヌザイ【写真:工藤明日香 / フットボールチャンネル】

 多重国籍選手にとっての代表選択――。その葛藤は、彼ら彼女らを一体どれほど悩ませるのだろうか。

 FIFAが定める現行のレギュレーションでは、一度ある代表チームで国際Aマッチの公式戦に出場すると、その選手は他の代表チームでプレーすることが不可能となる。日本人の父親とドイツ人の母親との間に生まれたDF酒井高徳も、一昨年に日本代表としてW杯のアジア最終予選に出場したため、今後はドイツ代表としてプレーすることができない。つまり、多重国籍選手にとっての代表選択は、今後のサッカーキャリアを強く規定するきわめて大きな決断なのだ。

 そんな苦悩と、弱冠19歳にして向き合った俊英がいる。マンチェスター・ユナイテッドで今シーズンプロデビューを果たし、世界中のファンを陶酔させたMFアドナン・ヤヌザイである。

 まさに悪夢だった今シーズンのユナイテッドにおいて、クラブの救世主として期待されたヤヌザイは、まもなく開幕するブラジルW杯にベルギー代表の一員として臨むことになった。

 驚くべきは、ヤヌザイが選択できた代表チームの数だ。その数なんと7ヶ国――。これは世界的に見ても突出しており、なかなかお目にかかることができない数だ。今回は、未来を嘱望されるこの若き才能が代表選択を下すまでに辿った経緯を振り返りつつ、来るW杯での活躍を占ってみることにしよう。

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