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“大物食い”の伝統あるクロアチア。W杯開幕戦、ブラジル撃破へ自信「完全に分析した」

text by 長束恭行 photo by Yasuyuki Nagatsuka

公正なコヴァチ監督。国民からも厚い信頼

 筆者が知る限り、クロアチア歴代監督でこのように明白なモットーを掲げた指導者は存在しない。1998年のW杯メンバーから漏れたことを今でも悔やむコヴァチ監督は、その後に代表で目の当たりにした数々の失敗を教訓としてきた。

 ミルコ・ヨジッチ(日韓W杯)やビリッチのように安易にメディアを敵に回さず、オットー・バリッチ(ユーロ2004)のような傲慢で保守的な振舞いもしない。親善試合と移動を繰り返し、日本戦以降にエンジン切れを起こしたズラトコ・クラニチャール(ドイツW杯)を反面教師に、ブラジルW杯の準備はコンディション重視に努めてきた。

 大言壮語で四面楚歌に陥った前任者シュティマッツと違い、誰に対しても公正な元キャプテンは、選手だけでなく国民からも厚い信頼を寄せられている。問題児として嫌われていたMFサミールを事前合宿に呼び、代表の椅子を最後に勝ち取らせた際も周囲から異議が何一つ出なかった。

 DFヨシップ・シムニッチの10試合出場停止処分の撤回がスポーツ仲裁裁判所で退けられた時も、MFニコ・クラニチャール、SBイヴァン・ストゥリニッチ、MFイヴォ・イリチェヴィッチ、MFマテ・マレシュ、MFミラン・バデリ(※最終期限で復帰登録)が故障で次々離脱したところでも彼の心は揺らがなかった。

「Ne kukamo.(我々は泣き言を言わない)」

 ドイツに生まれ育った移民二世として母国への望郷と愛情を抱きながら、不屈のゲルマン精神を吸収してきたコヴァチ監督が、現役時代から何度も口にしてきたフレーズだ。

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