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“大物食い”の伝統あるクロアチア。W杯開幕戦、ブラジル撃破へ自信「完全に分析した」

text by 長束恭行 photo by Yasuyuki Nagatsuka

テストマッチはブラジルを想定した戦い

 コヴァチ監督の「イズム」がチームに浸透したことが垣間見えたのは、最後のテストマッチとなった6月6日のオーストラリア戦。紳士協定が破られ、オーストラリアの荒いプレーでうずくまる選手が続出。

 前半22分にはチーム唯一の専門左SBダニエル・プラニッチが足首を負傷してしまう。指揮官は頭を抱えたが、選手達はタックルに文句を言うことなく、オーストラリアに対して自発的に“闘い”始めた。

「スコラーリ監督の腹心としてスカウティングに訪れたアレッシャンドレ・ガーロ(ブラジルU-20監督/元FC東京監督)にとっては収穫ゼロだった」

 ブラジルメディアはそう報じたが、一丸となって最小スコアでもぎ取った勝利は「威信」という観点で価値あるものだった。

“大物食い”の伝統あるクロアチア。W杯開幕戦、ブラジル撃破へ自信「完全に分析した」
EURO2008のドイツ戦。モドリッチ、ラキティッチ、中央に現役時代のコヴァチ【写真:長束恭行】

 コヴァチ監督は二試合のテストマッチで開幕メンバーを隠しつつ、対ブラジルの構想を練り上げながら戦術練習に取り組んできた。プレーオフのアイスランド戦でレッドカードを受けたFWマンジュキッチの出場停止は折込済み。

 むしろ、ゴールに飢えた彼をカメルーン戦とメキシコ戦で「野に放つ」ことができる。センターを組むであろうモドリッチとラキティッチを同時起用しなかったのは、疲労回復に加えてブラジルに手の内を明かさないためだ。また、大国相手ならば監督が尻を叩くまでもなく、選手の一人ひとりに闘争心が沸々と湧き上がる。

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