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“5人目の刺客”としてフィニッシュへの導火線となる――。“ジョーカー遠藤”が日本代表にもたらす最大の利点

text by 北條聡 photo by Asuka Kudo / Football Channel

日本版リベラ。ジョーカーとしての遠藤

 ジョーカーの「新顔」とはいえ、周囲とのコンビネーションは確立済み。歴戦の勇者の加勢は、アタック陣に千軍万馬の味方を得たような高揚感をもたらすことにもなる。もとより、日本屈指の司令塔に寄せる周囲の信頼は絶大だ。かように遠藤のジョーカー起用には、有形無形の「利付着している。

 遠藤とよく似たタイプのジョーカーを挙げれば、イタリアの天才的司令塔ジャンニ・リベラか。ストライカー色の強い「宿敵」サンドロ・マッツォーラの控えに回った1970年のメキシコW杯で、イタリアを決勝に導く、文字どおりの切り札となっている。

リベラが後半途中に登場すると、にわかに攻めのテンポが変わり、2トップを含む周囲の選手たちが水を得た魚のように、めまぐるしく動きはじめた。

 ハイライトは『アステカの死闘』として語り継がれる西ドイツとの準決勝だ。途中出場と同時に反撃の先頭に立ったリベラは、1本のパスから次々と敵の急所をえぐって再三の好機を演出したうえに、延長戦では西ドイツの息の根を止める決勝ゴールまで奪ってみせた。イタリア人初のバロンドール(1969年ヨーロッパ年間最優秀選手)受賞者である天才パサーの面目躍如であった。

 遠藤への期待も、リベラと同じ「マスターキー」としての役割だろう。どんなに堅固な扉もこじ開ける万能のカギとして、遠藤以上の存在は見当たらないように思う。リベラの伝説を知るイタリア人監督は、遠藤にその姿を重ね合わせているのかもしれない。

 強豪相手に「負けない」ためのリスクヘッジは必須だが、どこかでリスクを冒す勇気と覚悟がなければ「勝ちきる」ことは難しいだろう。そうしたジレンマを一気に解消しうる妙案が『ジョーカー遠藤』だとすれば――。円熟を極める「日本版リベラ」の出現に賭けてみるのも、悪くはないと思う。

【了】

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