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ドイツ代表が見せた新たな柔軟性。“バイエルン組”によるトリプルボランチ

text by 本田千尋 photo by Getty Images

有効だったトリプルボランチ

 ボールを奪った際、アメリカのカウンターには迫力がなかったが、ドイツのカウンターにも迫力はない。迫力がないというよりは、無理をしないといったところである。

 後半に入るとドイツは前半にあまり見せ場のなかったポドルスキに代えてクローゼを投入する。そして55分、ショートコーナーからメルテザッカーが頭で合わせて、キーパーが弾いたところをミュラーが鮮やかに突き刺して先制した。結果的にこれが決勝点となる。

 対アメリカ戦のドイツ代表で特徴的だったのは攻撃時における両SBのポジショニングである。ガーナのような中央へのプレッシングとSBの攻撃がなかったため、ボアテングとヘーヴェデスは比較的前へと押し上げていくことができた。

 そしてペナルティエリアの角の手前に安定した起点を作る。そして、その起点をボランチの誰かが追い越していく。例えばボアテングを支えとして、ラーム、シュバインシュタイガーがサイドを突くのである。サイドと言ってもタッチライン際ではなく、あくまでペナルティエリアの内側を攻めていった。

 確かにこの方法であれば、SBの攻撃力に頼らずとも、SBを中心にサイドから攻め立てることができ、かつSBの後ろのスペースに対するリスク管理も同時に行うことができる。

 トリプルボランチにプレスを仕掛けてサイドで数的優位を作ってこないアメリカに対しては、有効な手段だった。

 最終的にドイツ代表は1-0のスコアでアメリカ代表を下して、グループGを首位通過する。堅守からの速攻、パス・スタイル、前線での流動性、SBを中心としたボランチによるサイドアタックなど、引き出しの多さを示しながらグループリーグを戦った。相手と時間帯があってのものである。

 苦しんだガーナ戦ではちょっとした弱点も見られたが、1つのスタイルにこだわり過ぎない柔軟性で、ドイツ代表は決勝トーナメントへと勝ち上がった。

【了】

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