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実は国民の半分以上が突破を信じていたコスタリカ。番狂わせを起こした小国の国内事情に現地在住記者が迫る

text by 池田敏明 photo by Getty Images

攻撃が“好き”なだけであって決して“得意”ではない

 スタジアムは客席に座りきれないほど超満員となり、消火器や発煙筒を駆使した熱狂的な応援が繰り広げられる。そしてコスタリカ代表の試合、それもW杯予選などの公式戦になると、熱狂のボルテージは最高潮に達する。

 3万5000人を収容するエスタディオ・ナシオナルは超満員に膨れ上がり、代表チームを後押しするファンの大歓声がW杯北中米カリブ海予選で格上のアメリカ、メキシコを撃破する原動力となった。

 代表チームは予選最終ラウンドを2位で突破した。しかし、この成績を鵜呑みにするわけにはいかない。安定感を欠いた戦いぶりに、国民は何度もやきもきさせられてきた。

 近年は若くして海外に活躍の場を求める選手が増加し、代表チームも海外組を中心に構成されているが、大半はノルウェーやスウェーデン、デンマークといった北欧諸国やメージャーリーグサッカー(MLS)のクラブの所属。そのような海外組の選手の絶対数が多く、なかなかメンバーを固定できないという課題もある。

 攻撃志向は強いものの、攻撃が“好き”なだけであって決して“得意”ではない。サイドバックやボランチの選手がバランスを考えずに攻め上がり、ボールを奪われて自陣の広大なスペースを突かれ大ピンチを招く、というのがお決まりの失点パターンだ。

 ホルヘ・ルイス・ピント監督はこの点を改善すべく5バック気味の布陣を採用しているが、そのために攻撃はフォワードのブライアン・ルイス(フラムFC所属)、アルバロ・サボリオ(レアル・ソルトレーク所属)ら前線の選手の個人能力への依存度が強い。

 肝心の守備も大きくクリアすればいい場面で無理やり繋ごうとしたり、守備の人数が多すぎるがゆえにお互い譲り合ってしまったり、リトリートしすぎてボールへのプレスが甘くなったりと、崩れるときはあっさりと崩れる。

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