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暴走はなぜ止まらないのか?「新国立競技場問題」の核心(その1)

text by 佐山一郎

ずさんなひどいコンペ

佐山 2002年に後藤さんが『日本サッカー史』(双葉社)を上梓するまでは、第三者的立場からのサッカー史すらなかった。博捜した参考文献が100近くもある今度の『国立競技場の100年』にしても、国立競技場の通史としては初めてのこと。惜しむらくは、悪評紛々の「新国立競技場基本構想国際デザイン・コンクール」が始まる前に出せなかったこと!

後藤 あれは、ずさんなひどいコンペでしたよね。国立競技場への思いはいまだに冷めていないし、専用じゃない部分はあるけど、とても落ち着いていて見やすい。

佐山 64年東京五輪のときに、小学6年生のぼくたちは、同じバックスタンドでハンガリー対モロッコ戦を観ていた。自分の場合は、メインスタンド司令室外壁面に今もある陶片モザイク壁画(左・相撲に勝った瞬間の力=野見宿弥=のみのすくね/右・古代ギリシャの勝利の女神=ニケ)をなぜかハワイのフラダンサーと信じて疑わなかった(笑)。御本にもあるように、美装工事が予算不足で遅れる中、寄贈元は旭硝子で工費約240万円だったとか。

後藤 制作者の長谷川路可画伯(本名・龍三/1897─1967)は、遠い親戚なんです。祖父は直接行き来していて、母も路可さんに会ったことがある、と。

佐山 正面玄関の床面に貼られた大理石モザイクも長谷川路可ですね。バックスタンドの回廊を飾る10面ある大壁画の制作にも、宮本三郎ら当時の美術家が参加しています。

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