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なぜ1番・2番ではなく3番が歌われるのか? W杯決勝前に知っておきたいドイツ国歌の謎

text by いとうやまね photo by Getty Images

歌われない1番2番には

 この曲が、初めてドイツ国歌として正式に採用されたのは、1922年のことである。ワイマール共和国の時代だ。その後ナチスドイツの時代になっても、国歌は使い続けられた。現在では1番、2番の歌詞が使われることはない。

 それでは、1番、2番にはいったい何が書いてあったのか?

 問題表現があったであろう事は想像できる。しかし、「ナチス賛美の詩だ」とか、「ナチス政権が作詞した」だとか、事実と違う認識を持った人が多い。そこで「どのへんがマズかったのか?」を、少しだけ検証してみたい。

 では問題の1番から。

1  ドイツ ドイツ 世界に冠たるドイツ  
すべての同胞が 団結して 国を保ち続けよう  
マース川から メーメル川まで 
エッチェ川から ベルト海峡まで  
ドイツ ドイツ 世界に冠たるドイツ

ちなみに、マース川は今のオランダ、メーメル川は今のリトアニア、エッチェ川は今のイタリア、ベルト海峡は今のデンマークにある。北海からバルト海に及ぶヨーロッパ北部全域を、ほぼ覆っている。これではあちこちから文句が出ても無理はない。
次に2番だが、これは別の意味で問題がある。

2  ドイツの女性 ドイツの誠実 
ドイツのワイン ドイツの歌  
その伝統を 保ち続けよう  
古き良き名声は われらに 品性をもたらす 命あるかぎり 
ああ ドイツの女性 ドイツの誠実 
ドイツのワイン ドイツの歌

「ドイツの女性!」「ドイツのワイン!」

 こんな国歌は聞いたことがない。個人的には、こういうのもアリなんじゃないかと思うのだが、一方で、こんな声も聞こえてきそうだ。「それを言うならフランスの女性!フランスのワイン!だろう」「いや、チリの女性!チリワインだ!」 「いやいや、イタリアを忘れてもらっては困る」等々。議論百出すること間違いない。

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