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ドイツの“日本人街”デュッセルドルフ。2部ながら開幕戦で4万人超。熱気溢れるスタジアムに広がる異国の輪

text by 本田千尋 photo by Getty Images

フロントの尽力で再建。地元の人々もクラブに誇り

 試合は人々の飢えと情熱を、まさに反映したものとなった。34分、リンドルが鮮やかに先制する。60分、ブラウンシュバイクのレイシェルによって同点に持ち込まれる。すぐさま65分には、ベンショップが突き放す。このまま開幕戦を白星で飾れるかと思った84分、ニールセンによってドローに持ち込まれる。

 ゴールネットが揺れる度に、スタジアムの感情も揺れ動く。歓喜と失望が交互にうごめいた。それは自分たちのクラブを誇りに思っているからこその、感情の揺らめきと言えた。

 フォルトゥナは100年以上の歴史を持ち、かつて70年代の終わりには、UEFAカップウィナーズカップの決勝でFCバルセロナと3-4の撃ち合いを演じたこともある。1時期4部にまで低迷してしまったが、フロントのスタッフをはじめ様々な人たちの尽力もあって、またここまで帰ってきた。

 観衆の中には、初老の男性と女性もいれば、小さい子どもたちもいる。チームとファンは喜びと哀しみを分かち合いながらこの日を迎えて、またこれから、嬉しいときもあれば苦しいときもあるフットボールの時間を分かち合っていくのだろう。

 フォルトゥナ・デュッセルドルフの2014-15シーズン、ブンデスリーガ2部開幕戦を見ると、欧州チャンピオンズリーグといった大きな大会で結果を残すことや、その舞台で革新的な戦術を披露することだけがサッカーの魅力ではないことが良く解る。

 むしろアリーナを埋め尽くした赤い群衆が見つめるボールの行方に、サッカーというスポーツが世界中で愛される理由が垣間見えるのである。

 デュッセルドルフはヨーロッパの中でも日本人が多い街で知られる。激闘を終えての帰り道、今日のフォルトゥナの出来について、ああだこうだとぶつくさ言う3人連れの日本人の姿もあった。輪は異国の人間にも広がりつつある。

 ドイツ人と日本人がぶつくさ言い合いながらスタジアムを後にする光景が見られる日も、近いのかもしれない。

【了】

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