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Jリーグ 10年前

リーグ最高の守備力を誇るFC東京と浦和。その壁をぶち破るのはどちらだ

text by 青木務 photo by Getty Images

スコアレスに終わっても決してつまらない試合にはならない

 昨年の浦和は守備力がクローズアップされるチームではなかった。ミハイロ・ペトロビッチ監督の下、攻撃力のあるサッカーを追及してきたが、リーグ最多の66得点を記録しながら最終順位は6位に沈んだ。失点の多さは問題で、優勝したサンフレッチェ広島がわずか29、3位の川崎フロンターレも51、浦和はそれより多い56失点を喫している。攻撃はどんな相手にも通用するだけに、守備力の強化は優勝に向けて必須の条件だった。

 GK西川周作の獲得は文字通り大当たりで、彼の活躍なくして守備面の改善はなかった。7試合連続無失点という記録も樹立できなかっただろう。そして日本最高級の守護神を頼りきりになるのではなく、最終ラインを中心にフィールドプレーヤーの頑張りも目立つ。

 前節の広島戦では終了直前に大ピンチを迎えた。西川のファインセーブがチームを救ったが、少しでも相手に寄せてプレッシャーをかけてくれた味方への感謝を口にした。

 それまで3試合連続で失点していただけに、選手たちへの守備意識はいつも以上に高く、集中力も研ぎ澄まされていた。このシーン以外にも、試合中は選手たちが至る所で身体を張り、球際の激しさも示した。

 F東京も浦和も、守備の強化を施し上位につけている。そんな両者の戦いはどのような展開になるのだろうか。ボールを保持するのは浦和だと思われる。MF柏木陽介がパスワークの起点となり、両サイドを広く使いながらゴールに迫っていく。

 対するF東京としてもポゼッションを相手に譲ることは想定内かもしれない。ブロックを作りつつ、ラインは下げすぎない。絶妙なバランスをとりながら相手をおびき寄せ、奪ったボールを前線に送り、河野、武藤というスピードある選手が一気にゴール前へなだれ込む。

 互いに守備力の高さは証明しており、得点は生まれないかもしれない。だが仮にスコアレスドローで終わったとしても、つまらない内容にはならないように思う。拙い攻撃が90分続いてのドローではなく、どちらも攻撃の持ち味を存分に発揮しながら両チームの守備陣が食い止めた、という結末になるのではないか。

 レベルの高い両者の対決は、どんな結末になっても、満足してスタジアムを後にできるはずだ。

【了】

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