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業界一の問題児、本人は年俸半減だが――。デメリットありながらリヴァプールとバロテッリが移籍に合意した理由

text by 山中忍 photo by Getty Images

どんどん値を下げていったバロテッリの価格

 年齢は、これからが最盛期の24歳。それでいて、3シーズン前に17得点のプレミア実績も持つイタリア代表FW。ストライカーの「高値」は移籍市場の常識であり、バロテッリには最低でも3000万ポンド(約50億円)台の値打ちがあると思われる。

 この夏も、ウェストブロムウィッチが、25歳のナイジェリア代表ブラウン・イデイエの獲得に1000万ポンド(約16億円)を要している。サウサンプトンがハルから獲得した、27歳のアイルランド代表シェーン・ロングの移籍金は1200万ポンド(約20億円)だ。バロテッリの実力と潜在能力は、数百万ポンドの価格差を凌ぐレベルで両FWを上回る。

 もちろん、「特価」には理由がある。バロテッリの値札の裏には「トラブルメイカー」との注意書きがあったようなものだ。インテル・ミラノ、マンチェスター・シティ、ACミランの過去3クラブでは、我が儘な「危険因子」として「処分品」扱いされている。シティは、インテルからの購入費を500万ポンド下回る1900万ポンド(約32億円)で手放した。続くミランは、更に300万ポンド値下げしてリヴァプールへと売却した。

 一般的にはスアレスも「問題児」と見なされている。リヴァプールでも、相手選手への人種差別的な発言と噛みつき行為で2度の長期欠場処分を受けた。但し、自軍にとっては頼れるエース。ゴールとアシストはもちろん、ボールと敵を追う闘争心でも常にチーム随一の戦力だった。

 ところが、7500万ポンド(約128億円)で買われたスアレスとは違い、「1600万ポンド」で買えたバロテッリには、得点に絡めなければ貢献度が皆無に近い試合がある。

 リヴァプールのCBから解説者に転身したジェイミー・キャラガーは、「威嚇すれば消せる選手だった」と現役時代に対戦した元シティFWの印象を語り、古巣の補強に警笛を鳴らしている。ロジャーズのリヴァプールは、攻撃は後ろから、守備は前からという理念に基づく「全員サッカー」集団。「自己中心」のレギュラー出現でチームの一体感が損なわれかねない。

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