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フットボールマネーを追え!【03】Jリーグが見習うべき欧州スタジアムの『おもてなし』。工夫は観客を呼び、“どんぶり勘定”はリーグ衰退を招く

シリーズ:フットボールマネーを追え! text by 小松孝 photo by Getty Images

モラル無視の闇経営を主とするイタリア。国民性が経営力にも影響

 嬉しいのはそれだけではない。スタジアム建設費用はFFPでも別会計で、プラティニ会長が鋭い視線を注ぐ借金とはみなされないのである。

 企業経営にとって大事なのは売上の増大と利益率の拡大であり、やたらとバランスシートを膨張させることではない。だが、もしこの2つを成功させることができたら、それはそれで、より盤石な経営が図れるというものだ。

 プレミアリーグに登録されている選手には、イングランド国籍以外の選手も多い。しかしオーナーや経営陣は、マンチェスター・ユナイテッドの所有者が米国人のグレーザー氏で、リヴァプールのオーナーが米系投資会社のフェンウェイ・スポーツ・グループであり、イングランドやアメリカの文化コードはいずれも、【01】で取り上げた(1)の「リーガルコード(法的規範や倫理が重視される)」に分類される(https://www.footballchannel.jp/2014/08/22/post48014/3/を参照)。

 世界の3大金融市場の2つがロンドンとニューヨークという観点からも、それがリーガルコードに由来するものなのか、彼らは金融工学を巧みに操り、投資ビジネスを得意とするなど、会計学に明るい民族でもある。

 こうしたことからも、(1)の「リーガルコード」の国々と、おそらく「リーガルコード」と「モラルコード(道徳的規範を中心に、人間関係が大事)」の2つと思われる(4)の「ミックスコード」のドイツが、サッカービジネスにおいても成功をつかんでいる大きな要因なのかもしれない。

 加えて、決められた法律やルールを遵守する意識は、その名の通り、(1)の「リーガルコード」の国民のほうが、(2)の「モラルコード」の民族よりも、はるかに高い。そのことからも、ブンデスリーガは、FFPに対する対応にも抜かりがないものと思われる。

 反して、イタリアは、(2)の「モラルコード」でありながら、モラルを無視したアングラ(闇)経済が実態経済全体の半分を占めると噂されるように、したたかな交渉術に磨きをかける国民性がある。

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