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ボールボーイにも指示、ヴェンゲルすら手玉に。モウリーニョに見る“ビッグゲームの勝ち方”

text by 山中忍 photo by Getty Images

差を分けたのは“資金力”なのか?

 チェルシーは指揮官から授けられた勝つためのプランを冷静かつ冷酷に実行していた。90分間で14回のファウルを犯したチェルシーだが、大半は計算づくのプロフェッショナル・ファウル。オスカルやエデン・アザールといったチャンスメイカー陣も、軽い反則で効果的に敵の速攻を止めていた。

ボールボーイにも指示、ヴェンゲルすら手玉に。モウリーニョに見る“ビッグゲームの勝ち方”
古巣との初対決で注目されたセスク・ファブレガスは警告を受けることなくアーセナルの攻撃を寸断【写真:Getty Images】

 アーセナルのファウル数は10。PKを取られたCBのローラン・コシエルニーにはレッド、右SBのカラム・チェンバーズにはイエロー2枚が提示されていても不思議ではなかったように、苦し紛れの反則が目立った。指揮官と同じく選手も必死だった。

 対照的にチェルシーは、指揮官も選手も全ては予定通りという余裕すら窺わせた。古巣との初対決で注目されたセスク・ファブレガスにしても、中盤中央で攻撃の中枢となりつつ、前半だけで6度、警告を受けることなくアーセナルの攻撃を寸断している。

 タッチライン沿いで我を忘れたヴェンゲルは、アレクシス・サンチェスを削ったガリー・ケイヒルのタックルへの怒りだけではなく、鬩ぎ合いが続いているようでもチェルシーの勝利しか見えない戦況への不安に突き動かされたのだろう。

 敗軍監督は「資金力の差が勝敗を分けた」と語った。敵が買い入れたアザールとジエゴ・コスタという「個人に決定的な仕事をされた」と敗因を述べた。またしても「打倒モウリーニョ」に失敗した悔しさが言わせた発言だ。

 たしかに、チェルシーの先制点はアザールが個人技で奪ったPKによるもの。ジエゴによる追加点はトラップもフィニッシュも完璧だった。しかし、チェルシーの勝因は「個の力」が監督の指示と期待通りにチーム力として発揮された結果。

 そのことは、内心ではヴェンゲルも痛感しているはずだ。自軍では、アザールとジエゴよりも移籍金が1000万ポンド(約17億円)ほど高いメスト・エジルが、苦手の守備はもちろん、本来の攻撃でもチームに貢献できなかったという厳しい現実もある。

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