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Jリーグ 9年前

ビッグクラブなき東京都。目指すべき未来はパリにあり。スターの獲得、新国立の活用…多様化する娯楽に対抗を

text by チェーザレ・ポレンギ photo by Getty Images

未来=パリ? あらゆる娯楽に対抗できるか

 だがこの比較における問題点は、ロンドンには少なくとも2つのワールドクラスのクラブ(チェルシーとアーセナル)があり、それぞれ6万人と4万2千人を収容するスタジアムをいつも満員にしつつ、欧州でハイレベルな戦いを繰り広げているという点だ。関東圏にはこのレベルに迫るクラブすら存在しない。

 そこにこそ、今回の問題点の肝となる部分がある。東京は、まだ「ビッグクラブ」を持っていないということだ。東京23区内に本拠地を置いてJリーグ制覇を成し遂げたことのあるチームが存在しない(ヴェルディが優勝した時の本拠地は川崎だった)どころか、23区内に本拠地を置いているチームすらないのだから。(FC東京の練習場は小平市、スタジアムは調布市)

 東京都全域まで含めたとしても、観客数はFC東京が(サッカー専用ではない)味の素スタジアムに集める2万5千人ほどが最高のものだ。

 少なくとも今の状況では、残された可能性はあと1つしかないと思う。

未来? – パリモデル

 東京を中心とする首都圏は、4千万人が居住する大都市圏だ。東京で生まれた住民もいるが、日本各地やアジア、世界から多くの人口が流入しており、その関心の対象は非常に広範なものとなっている。

 飲食物も音楽も芸術も、考え得る限りあらゆる娯楽が東京には溢れかえっている。言い換えれば、この街においてサッカークラブは他のクラブや他のスポーツと競争するだけではなく、そこに存在するあらゆるエンターテインメントとも勝負しなければならないということだ。

 欧州にも、ほんの数年前までは同様の問題を経験していた大都市が存在する。「光の都」ことフランスのパリだ。

 美術館やレストランなどの間に紛れて、パリ・サンジェルマンは概ね平均的な選手たちを擁する平均的なクラブとして、大きな野心も抱いていなければ注目するファンも限られていた。それが突然のように一変したのは、カタールからオイルマネーが流れ込んだ2011年のことだ。

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