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代表 9年前

遂に頂点へ――。アジアの雄へ正式に名乗りをあげたサッカルーズ 

text by 植松久隆 photo by Getty Images

ポスタゴグルー改革の象徴、ルオンゴ

 多くのサポーターの素晴らしい応援に後押しされたこの日の韓国は、試合を通じて気持ちの入ったプレーを見せ、ほぼ120分止まることなくファイトした。この対戦相手の頑張りと会場の熱気にあてられてか、サッカルーズも、いつも以上に勝利のためにはなりふり構わないという強い気持ちが表れえいたように見えた。

 その中でも、豪州の先発メンバーの最年少22歳のMFマッシモ・ルオンゴは、ピッチ上で躍動して存在感を見せつけた。試合の前半で最もスタジアムが沸いたのも、そのルオンゴの前半終了間際の得点シーン。中盤の奥からDFトレント・セインスベリーが素早く送り込んだボールを受けたルオンゴは、DFを交わしながら思い切り右足を振りぬく。彼の右足から放たれたボールは、韓国ゴールネットに突き刺さり、サッカルーズの貴重な先制点となった。

 ルオンゴは、試合後の表彰式で大会のMVPに選出された。今回のサッカルーズは、特に誰かに大きく依存して勝ち上がってきたチームでは無いので、MVPには幾つかの選択肢が考えられた。しかし、6試合全試合に出場して2ゴール4アシスト、今や、サッカルーズの新世代の代表格に育った22歳若き才能は、その個人タイトルにふさわしい活躍を見せた。彼の若さゆえの衒いの無い溌剌としたプレーは、内外の多くのファンにサッカルーズの「世代交代(regeneration)」を強烈に印象付けた。

 アンジ・ポスタコグルー監督が、自ら、イングランド実質3部のスウィンドン・タウンでプレーするルオンゴを見出し、W杯のメンバーに抜擢、経験を積ませてこその今がある。その意味では、まさにポスタコグルー・サッカーの申し子とも言うべき彼のMVP選出は、「ポスタコグルー改革」とそれに伴うサッカルーズの明るい未来を象徴するものと言える。

【次ページ】陰のMVP、ミリガン
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