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2015年の君たちは――。東京ヴェルディユース、花の92年組を追って:第13回 ―いつでもどこでも誰とでも

「指導者は人を残す仕事」

「プロに行き、故障に悩まされたり、メンタルの問題や戦術の対応でつまずき、ノッキングを起こしたケースもある。じっくり取り組む時間は必要なんですよ。ヴェルディの育成出身は評価されすぎる。期待値が高すぎる面がある。18歳までの育成と19歳から22歳までのプロ移行期はセットで考えないといけない。それは強く思いますね。状況に応じ、引き出しの中身を適切に使い分けられるのが大人のサッカー選手の条件ですが、すぐにこなせるプレーヤーは稀です。たらればになってしまうけど、彼らをもっと大きくしてあげる方法はあったでしょう。ただ、間に合わないわけではないですから。これから飛躍できる可能性は充分ある。その点、大学に行った選手はローパワーをかなり蓄えられるメリットがあります」

 運動生理学におけるハイパワーは非乳酸系の瞬発力、ローパワーは有酸素系の持久力を指し、ふたつの中間に位置するミドルパワーの3つに大別される。ここで楠瀬の言うローパワーはフィジカルに限定されず、サッカー選手を続けていくためのベース部分と解釈するのが妥当だろう。

「大学でサッカーを続けるには、継続性、思い続ける力が必要です。代表的なところで、相馬将夏(法政大4年)がそうかな。彼のプレースタイルを見ればわかるように、やり続ける力は人一倍ある。現時点の能力ではJ2の中位以上のチームでは足りないでしょう。将来的にたくさんのお金を稼ぐのは難しいかもしれない。でもね、ひょっとしたらきっかけを掴み、ステップアップしていく可能性はある。そういう人間をサッカー界に残していくのが大事なんですよ。僕ら指導者は世界に通用する選手を育てることもそうですが、人を残していくのが仕事です。施設やグラウンドを残せるわけではないのでね。そうしないと日本サッカーが良くなっていかないでしょ? 今後、彼らのプレーする場所がJリーグであれ地域リーグであれ、そこを選んでやっていることに敬意を表します」

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