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2015年の君たちは――。東京ヴェルディユース、花の92年組を追って:第13回 ―いつでもどこでも誰とでも

厳しさをもって指導する中村氏

 中村忠(FC東京U-15むさし監督)はジュニアユース、ユースのコーチとして92年組を鍛えた。指導者の道に足を踏み入れてから、初めて学年担当を任された思い出深い選手たちである。

「いい意味で調子こいてる年代で、満足してもらっては困ると厳しく接しました。中心的な存在だったヨシアキには力が足りないことをとことん知らしめ、山浦新(慶応大4年)は何度泣かしたことか。育成年代を指導するうえで、彼らが自分にとっての基準になっています。プロになるための最低ラインとしてね」

 教え子たちの動きは常に気にかけてきた。選手としての中村は、読売クラブ(現東京ヴェルディ)の育成組織からプロになった叩き上げタイプだ。同期に冨樫剛一(東京ヴェルディ監督)がいる。当時との比較では、プロ入りの門戸は広がり、サッカーでメシを食うことの選択肢も増えた。

「僕らの頃は白か黒かしかなかった。頼れるのは自分の力だけで、石にかじりついてでもサッカーをやりたい人間が生き残った時代です。現在の状況はチャンスが広がった一方、なんとなく夢を追ってしまう危険が出てきたと見ることもできる。とはいえ、そこは個人の覚悟の問題じゃないですか。少ない報酬でスタートしたとしても、絶対に結果を出して自分の価値を上げてやると思うのだったら、プロの世界に飛び込めばいい。その覚悟を持てないのだったら、すっぱり見切りをつけることも大事です。大学サッカーの指導レベルはバラつきが大きく、環境に合う合わないの問題もあります。そのなかで自分なりにやり抜いた選手がプロになれる」

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