超低予算でバルセロナをしのぐ超攻撃的ポゼッションサッカーを実践。ラージョの指揮官パコ・ヘメスが語る美学

発売中の『欧州フットボール批評issue01』(カンゼン)では「TOTAL FOOTBALL 2.0 進化する戦術の次世代モデル」と題した特集で、スペインで注目を集めるラージョ・バジェカーノの監督パコ・へメスにインタビューしている。超攻撃サッカーを信奉する指揮官の哲学とは? 一部抜粋して掲載する。

2015年02月15日(Sun)10時00分配信

text by 江間慎一郎 photo Shinichiro EMA
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バルセロナ、バイエルン・ミュンヘンに次ぐポゼッション率を記録

超低予算でバルセロナをしのぐ超攻撃的ポゼッションサッカーを実践。ラージョの指揮官パコ・ヘメスが語る美学
ラージョ・バジェカーノのパコ・へメス監督【写真:Shinichiro EMA】

 ラージョ・バジェカーノを率いるパコ・へメスは、現代のフットボール界における異端者である。スペイン代表にも選出された現役時代にセンターバックを本職とした男は、監督となってから超が付くほどの攻撃的フットボールを志向。リーガエスパニョーラ1部の中でも、最少規模のラージョでそれを実践するという無謀ぶりながら、2年連続で残留を果たすなど着実な成果を収めている。だが彼が欲する成果というものは、美しいパフォーマンスの上に成り立っていなくては意味がなく、それ以外は不当なのである。彼が無謀な夢想家なのか、我々が打算的になり過ぎたのか。いずれにしても、P・へメスはフットボールに全身全霊を捧げる。勇敢に立ち向かうものと定義する、人生そのものに見立てて……。

――1000万ユーロ弱と、リーガ1部においてエイバルに次いで予算の低いラージョ・バジェカーノですが、なぜこの舞台で戦い続けられるのでしょうか?

パコ・へメス(以下、P) 一概には言えないが、困難な状況の中で、各々が懸命に仕事を行っているからだろう。私のラージョは3シーズンにわたってここに残り続けている。その秘密? たゆまぬ努力と確固たる信念、また雄弁に語りかけてくる理論に一切耳を傾けないことだ。我々は毎シーズンにわたって新たなアイデアを生み出し、不可能を可能に変えられることを証明しなければならない。とても難しいことではあるがね。

――ここ数年の欧州主要リーグにおいて、あなたのラージョはバルセロナ、バイエルン・ミュンヘンに次ぐポゼッション率を記録しています。

P 注目を集めているのは数字よりも、無謀な挑戦に臨んでいるということだろう。ただ我々にとっては、最も誇りを感じている部分でもある。ラージョはマドリッドではレアル・マドリー、アトレティコ・マドリーに次ぐ3番目のクラブとされ、予算的にはヘタフェも下回るクラブだ。そのために毎シーズン10~12選手の入れ替えがあり、ベースの構築が難しいプレースタイルの実践を、より困難なものとしている。実際、我々のパフォーマンスを安定させるためには、ほかのチームよりも多くの時間をかけなければならない。しかし、だからこそ我々が成し遂げていることには大きな意味があるんだ。我々の実践するプレースタイルはじつに難易度の高いものであり、簡単に行えることなど一つもない。選手たちの動きのメカニズム、冒すリスクの高さ、自分がフットボールに抱く信念……。そのすべてを飲み込んだチームを生み出すのは実に骨が折れる作業だ。しかし私にとっては、やりがいのある挑戦でもある。

――なぜリスクを冒し、攻撃的なプレースタイルを実践するのでしょうか?

P そういうフットボールを好んでいる。単純にそれだけだ。それは「なぜ青色を好むのか?」と質問するのと同じであり、「好きだから」としか答えようがなく、それ以上の説明などできやしない。私は攻撃的なフットボール、美しいパフォーマンスを愛している。それは私の心を打つものであり、だからこそ選手たちに対して、そうプレーしてくれと必死に訴えることができる。もちろん、ほかのプレースタイルや練習方法があることも理解しているし、最大限の敬意を払うよ。監督という職業は、すぐに首が飛ぶものだからね。

――あなたの好むフットボールは、選手を選ぶものでもあります。茨の道とは思いませんか?

P どのような道も簡単であるはずがない。ならば程度の差にかかわらず、自分の望む道を選ぶべきなんだ。私は監督としてのキャリアを3部のチームから歩んできたが、その道程は非常に価値のある経験だったと思う。練習で使用できるボールの数が少なく、また土や人工芝のピッチという劣悪な環境で、自分のフットボールをどう実践すべきかを学べた。そのような経験は、確実に自分の力となっている。

――美しいフットボールを実現する上で、最も適したシステムはどれであると考えますか?

P 我々は複数のシステムを使用している。頻繁に使っているのは1-4-2-3-1だが、それをベースとして1-4-3-3や1-3-4-3にシステムを変えることもある。複数のシステムを扱えれば、試合中に流れを変えることが可能となり、勝利を収める確率も高まるはずだ。ただシステム、つまり数字の並びに固執し過ぎてもいけない。私が好む1-4-2-3-1であっても、それはただの出発点に過ぎないんだよ。重要なのはシステムに選手をはめ込むのではなく、相手陣内にどのように攻め込むか、どこでプレッシングを仕掛けるか、どのように試合を終えるかなんだ。

――試合の準備に、どれ程の時間を費やしますか?

P ラージョは相手に合わせて何かを変えることはない。相手がアルメリアでもレアル・マドリーでも同じことだ。もちろん、対戦相手のことも頭には入れているが、我々は唯一無二の個性を持ったームであり、自分たちのフットボールを実現することを何より意識しなくてはならない。つまり試合の準備は、我々のフットボールを突き詰めることにある。

――プレーのメカニズムを理解させることにおいて、どのような方法が最も効率的でしょうか?

P 映像を使ったセッションだね。戦術については、ピッチ上よりもビデオルームで時間を割いた方が良いというのが、我々コーチ陣の考えだ。ポジションニングや動き方は画面で確認した方がより理解できるし、ピッチを使った練習で何をすべきかもより明確になる。ピッチ上で1時間立ちっぱなしのまま戦術を説明したとしても、選手たちは退屈に感じ、集中力を欠いてしまう。反対に映像によるセッションであれば、我々が注視していることを数分間で理解させられる。90分間プレッシングを続けることは不可能ではない。

――どのようなチームが相手でも戦い方は変わらないと言いましたが、例えばバルセロナ、アトレティコ・マドリーを相手にすれば、異なる試合を強いられることになります。

P 確かに我々は相手によって問題を抱えることがある。攻撃的、守備的であるかが明確なチームとの対戦が特にそうだ。いくつかのチームは攻撃に人数を割いて我々を自陣に押し込め、逆に後方に引きこもるチームには崩し切るのに苦労を強いられる。ただ、それでも我々の戦い方は変わらない。このチームは後方からビルドアップを図り、可能な限りボールを保持することを試みる。できる限り高い位置でプレッシングを仕掛けながらね。


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欧州批評01

『欧州フットボール批評01』
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ペップ・グアルディオラが生み出した新機軸 五角形から六角形へ/庄司悟、浅川俊文
「ペップ・コード」を解読せよ バイエルンのトレーニングに隠された進化の秘密とは?/木崎伸也 など

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