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武藤はスポンサーの“広告塔”なのか? 移籍で待ち受ける熾烈な定位置争い。チェルシーが持つ重要課題とは

text by 山中忍 photo by Getty Images

チェルシーが持つ重要課題とは

 チェルシーに限ったことではないが、時を同じくして、スカウト陣の間では「Jリーグ=アジア最強リーグ」という見方が強まっていたことも事実だ。

 だが、言うまでもなく「アジア最強=プレミア通用」とまでの認識はない。QPR戦前の会見に向かう道すがら話をした『タイムズ』紙の移籍情報担当の意識の中に、武藤の名はインプットされていなかった。つまり、チェルシーは“戦力”を獲りに動いたとは見なされていない。明言を避けたモウリーニョにしても、“潜在能力”の獲得オファーには異論を挟まなかったと考えるのが妥当だ。

 実際、武藤が今夏にチェルシー入りした場合のポジション争いは、“特例”扱いがなければ難しい労働許可証の取得以上に困難だろう。チームの基本システムは4-2-3-1。強いて言えば、フィジカル適応が絶対条件の1トップよりも、スピードや左右両刀の足下といった長所を生かしやすい2列目アウトサイドの方が競いやすいと思われるが、チェルシーではアザールとウィリアンがレギュラーだ。

 アザールは、モウリーニョが「C・ロナウドとメッシに追いつける」と期待を寄せるチーム最大の武器。テクニックとスタミナが同等に光るウィリアンも、指揮官からの信頼度では負けていない。

 バックアッパーにも、推定400万ポンド(約7億2000万円)の武藤への提示額を6倍は上回る移籍金でクアドラドが加えられたばかり。来季には、最適なポジションはトップ下だが、昨夏のプレシーズンで好印象を与えたボガが2列目要員に加わる可能性もある。いまだにベテランのテリーしか生え抜きレギュラーがいないチェルシーにとって、ユースからの1軍戦力輩出はアジア市場開拓よりも力を入れなければならない重要課題だ。

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