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Jリーグ 9年前

『ドS』と『ドM』あうんの呼吸が生み出した走力。J1残留へ、“一人多い”松本山雅が挑む真夏の消耗戦

text by 藤江直人 photo by Getty Images

ストロングポイントを封じられても勝利を手にした甲府戦

 フィールドプレーヤーの1試合における平均の走行距離が10kmとされる。ファーストステージにおける総走行距離で、J1の全選手のなかで最長となる202.224kmをマークした岩上が言葉を弾ませる。

「12対11で戦っているようなものですよね。ウチが1人多いように相手が感じるのは本当にいいことですし、それが勝利につながったと思っています」

 反町監督もヴァンフォーレ戦後、そして翌日と2度にわたって開催したミーティングで「走ること」の意義を説いている。

「ウチが一人分も多く走って、効率よく走った相手に勝つ。すごく大事なことだと思うんだよね。それでトータルで結果がついてこないところが、サッカーの難しさでもあるんだけれども」

 ヴァンフォーレのホームに乗り込んだ25日のセカンドステージ第4節。完敗を喫した前回の反省から、ヴァンフォーレはがらりと戦い方を変えてきた。

 ワントップのバレーを除く9人のフィールドプレーヤーが自陣にリトリート。松本山雅にあえてボールをもたせ、狙いを定めてボールを奪ってからカウンターを仕掛ける。

「今日は守備に追われる時間が多かった。ウチはああいう戦い方をされると何もできないからね。特に最初の20分くらいは、甲府さんの思う通りにやられてしまった」

 反町監督の予想通りに、松本山雅の総走行距離は106.60km、スプリント回数は136回にとどまった。チーム平均がそれぞれ115.7km、173回だから、数字の上ではストロングポイントを封じられた形となる。

 それでも時間の経過とともに落ち着きを取り戻し、前半42分にMF岩沼俊介があげたJ1初ゴールを死守した。相手があってこそ、データの重要性は増す。対策を講じられたなかで、最終的には総走行距離とスプリント回数でもヴァンフォーレを上回った意義は大きい。

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