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Jリーグ 9年前

『ドS』と『ドM』あうんの呼吸が生み出した走力。J1残留へ、“一人多い”松本山雅が挑む真夏の消耗戦

text by 藤江直人 photo by Getty Images

安藤と工藤。チーム力をアップさせた新戦力

 初の連勝を決めた反町監督は、試合後の記者会見の席に着いた瞬間に大きく深呼吸をしている。

「我々はセカンドステージの勝ち点というよりは総合勝ち点をずっと追いかけているんですけど、やっと成人式を超えることができたかなと」

 年間の総合勝ち点が「21」に達したことを受けての「成人式」には、総合順位で15位、J2への降格圏となる16位のアルビレックス新潟と1差しかない現状への危機感が凝縮されている。

「ウチらの場合を考えたときには、やはりゼロに近い失点に抑えて勝ち点3を取っていかないと。もう勝ち点1じゃあ厳しい状況だからね。試合後にゴール裏のサポーターへ挨拶に行っただけで喉が渇くような環境のなかで、90分間足を止めることなく戦った選手たちには本当に感謝している」

 セカンドステージの開幕前日の7月10日に、スポーツ新聞紙上にこんなタイトルのコラムが掲載された。

「走れば勝てるって訳じゃない」

 トラッキングシステムが導入されているブンデスリーガと比較して、走力で相手を上回ったチームが勝つケースが少ないと指摘。そのなかでも、ファーストステージの総走行距離で1位となった湘南ベルマーレ、2位の松本山雅が「走るチーム」の勝率を下げている――とする内容だった。

 ヴァンフォーレ戦後に、このコラムに対する率直な感想を反町監督に聞いた。予想通りに『フットボールサミット』で取材したときと同じ言葉が返ってきた。

「そりゃあそうだろう。走って勝てるのなら、走りばかりやればいいわけだから。それと伴っていければいいわけだ。走りとボールを使うのとね」

 セカンドステージへ向けてDF安藤淳、MF工藤浩平が完全移籍で加入したことで、戦い方のバリエーションが増えた。ともに30歳で経験豊富な2人は、前者が3バックの中央でラインを統率し、後者はワントップのオビナの背後でシャドーストライカーを任されている。

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