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Jリーグ 9年前

芸術FKにハードワーク――。横浜FMの背番号10が見せた輝きと献身。浦和を手玉に取った中村俊輔

text by 青木務 photo by Getty Images

浦和にスイッチを入れさせなかった中村の献身

芸術FKにハードワーク――。横浜FMの背番号10が見せた輝きと献身。浦和を手玉に取った中村俊輔
中村俊輔は中盤の底を務める中町公祐と三門雄大のところまで下りてブロックを形成している【写真:Getty Images】

 横浜FMの良さばかりが目立った試合は、言い換えれば相手に何もさせなかったということでもある。前半、浦和の興梠慎三は全くと言っていいほど縦パスを受けていない。この1トップが最前線で起点となることで、浦和はピッチの様々な場所から多彩な攻撃を繰り出す。しかし、興梠がボールに関与できなかったためスイッチが入らなかった。

 もっとも、興梠が楔のパスを収められなかったわけではなく、そもそも彼のもとへボールが渡らなかった。そこには横浜FMの組織的な守備が要因としてあった。そして背番号10の身を粉にした働きが、ホームチームの牙城をさらに強固なものにしていた。

「なるべく自分が柏木(陽介)君につく」ことで、まずは浦和の司令塔を消しにかかる。そしてボランチとの距離を近く取り、「編み目を細かくする」ことでパスカットした時に味方がすぐそばにいる状況を作り出した。

 さらに中村は、中盤の底を務める中町公祐と三門雄大のところまで下りてブロックを形成している。例えば39分の場面。浦和がピッチ中央でパスを回しながら、縦に入れるタイミングを図る。しかし、この3人で立ちはだかりコースを切る。最後は苦し紛れに出されたボールを齋藤がカットした。良い距離感を保ちながら中央を閉じ、相手の核となるパスルートを寸断した。

 この3人の動きはよくオーガナイズされていた。前提としてダブルボランチの守備が素晴らしかったのだが、中村が中央に下りれば中町と三門は左右に少しずつ開く。サイドの守りに参加している時はそれに合わせてスライドするなど、10番のポジションによって微妙に位置をずらしながら対応していた。

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