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今、ブンデスリーガを体感中。信頼は勝ち得たのか。武藤嘉紀の現在地を探る

text by 本田千尋 photo by Getty Images

現状を分析して自らを客観視する能力

 7月の時点で、結果とはゴールとアシストの“両方”と口にした理由は、「ポジションがどこでやるのか分からない」からだった。合流したての練習では、SHでもプレーした。しかしブンデスリーガが開幕して、8試合連続でCFのポジションで先発したことで、武藤の中では「FWの役割」に対する自覚が芽生えているようだ。

 もちろん武藤は、これからもゴールだけでなくアシストも狙い続けるだろう。しかしそれだけでなく、見えてきたチームの中での自分を客観視した上で、求められる能力に対して自覚的である、ということだ。

 ドルトムントのようなハイプレスを信条とするチームに対して、CFにロングボールを送ることができれば、戦いのバリエーションが増えることになる。相手の頭上高くボールを送れば、そのままプレスの網を交わすことになる。

 必要以上に繋ぐことにこだわった挙句、カットされてカウンターを仕掛けられるといったリスクを減らすことができる。しかしそれも、しっかりとボールを収めるFWが前線にいることが前提条件となる。

 武藤嘉紀というサッカー選手は、そうした現状を分析して自らを客観視する能力に長けているようだ。入団会見の翌日には「結果」の必要性を話して、プレシーズンから意識して取り組んで来たからこそ、今では監督、仲間からの信頼を得ているのだろう。また、かつてプロの誘いを断って、大学サッカーの道に進んだことは、その能力の現れとも言える。

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