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日本代表 8年前

トルシエ元監督は招集を後悔。短絡的な議論で見逃されるOA枠のデメリット

text by 藤江直人 photo by Asuka Kudo / Football Channel , Getty Images

トルシエが吐露した後悔の念

 アトランタ大会から5大会連続で五輪出場を果たしてきた日本は、西野朗監督に率いられたアトランタ大会と反町康治監督に率いられた2008年の北京大会で、オーバーエイジを招集していない。

 特に前者はグループリーグ初戦で王国ブラジルを撃破したことで、いまもファンやサポーターの脳裏に鮮烈な記憶として焼きついている。もっとも、大会そのものの結果は両大会ともグループリーグ敗退だった。

 対照的に3枠をすべて行使した2000年のシドニー大会はベスト8へ、DF吉田麻也(VVVフェンロー)とDF徳永悠平(FC東京)を招集した前回のロンドン五輪ではベスト4に進出。1968年のメキシコ大会以来となるメダル獲得まであと一歩と迫った。

 歴代のU-23代表が五輪史に残した軌跡と、手倉森監督に率いられた今回のチームに対する評価が決して芳しくなかった事実を踏まえた結果として、オーバーエイジとして誰を招集するかという議論が早くも過熱しているのだろう。

 もっとも、ここで素朴な疑問が残る。五輪本大会でオーバーエイジ枠を行使すれば、本当にチーム力はアップするのだろうか――と。

 シドニー大会でGK楢崎正剛(名古屋グランパス)、DF森岡隆三(清水エスパルス)、MF三浦淳宏(横浜F・マリノス)をオーバーエイジとして招集。準々決勝でPK戦の末にアメリカに屈したものの、決勝トーナメントへ日本を導いたフィリップ・トルシエ監督から、こんな言葉を聞いたことがある。

「シドニー五輪でオーバーエイジを招集したことを、私は後悔している」

 トルシエ氏にインタビュー取材を行ったのは、カタール代表監督を務めていた2003年秋。山本昌邦監督に率いられたU-22日本代表が遠征でカタールを訪れ、親善試合を行った翌日だった。

 A代表のコーチとして自身を支え、2002年のワールドカップ日韓共催大会をともに戦った山本監督へのメッセージというテーマのなかで、オーバーエイジ枠の行使に言及したときだった。トルシエ氏の口から飛び出した仰天発言に、思わず耳を疑ったことをいまも鮮明に覚えている。

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