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【特別座談会】トルシエ、ジーコ、オシムの通訳が語る「日本代表は本当に強くなったか?」

text by 加部究 photo by Editorial Staff

日本は足下はうまくなっても文化としてはまだまだ

トニー・クロスビー
トニー・クロスビー。1962年生まれ。リバプール出身。リバプール美術学校(ジョン・レノンの出身校)とセント・マーチンズ美術大学(ロンドン)でファッションを専攻し、88年に来日。メンズウェアのデザイナーとして活躍し、98年からスタイリストに。著名なミュージシャンなどをクライアントに持ち、現在は映画やCMのスタイリストとしても活躍中。フジテレビ系のサッカー番組に出演して人気に【写真:編集部】

ダバディ 結局イギリスやブラジルのサッカーファンが、日本をどう評価するかですよね。私が思うには、たぶんフランスのファンも、アジアで一番強いというイメージは漠然と持っているけれど、まだ日本代表が強いというイメージは必ずしもないですよね。かつて中田英寿がフィオレンティーナからボルトンに移籍して行くタイミングで、パリ・サンジェルマンに行きたかった。

 当時の監督がハリルホジッチさん。まだ日本のサッカーなんか全然知らない。確かに中田英寿さんも下り坂だったかもしれないけれど、フリー移籍なのに要らないと言ったんですよね。つまり無料でもベンチにも置く価値がないという判断ですよね。10年前で欧州の一般的な指導者が、日本の最高レベルの選手を認めなかった。

 でもそれから10年間で、完全に中田英寿を超えた選手が出たのかどうか。ハリルホジッチさんは、凄く危機感を抱いていると思う。本田や長友は、昔のようなミランやインテルで活躍しているわけではない。香川真司もマンチェスター・ユナイテッドでは成功しなかったわけだから。みんなブラジル流で、上手いんだけどね。

鈴木 確かに足もとは上手くなっている。でも日本代表のスタッフとして、マンチェスター(シティ)で試合をして、ここからサッカーが始まったんだ、というものを凄く感じたんですよ。なんだか地から湧き上って来るような重みですよね。やはり文化として考えると、まだまだだなあ、と。もしかすると、このまだまだ、という感じのまま進んでいくのかな、という感じはしますよね。

千田 パッと見て、違う種目みたいに見えてしまうんですよね。立ったままのリフティングとかは上手いんですよ。でも動きながらの技術は、まだまだ。技術を試合の中でどう使うか。

トニー 凄く感じるのは、例えばもし英国なら自分が鬼怒川温泉に生まれたら、鬼怒川温泉のチームを応援する。鬼怒川温泉の選手が、たまたま代表に入ったら、まあ、オレの選手が入ったから見てやろうか、となる。代表は全てではない。最優先なのは、自分のローカルなチーム。だからオレは代表戦では、リバプールの選手しか見ていない。リバプールがここ(天辺)にあって、代表はこの辺(ひざ下)。日本は逆なんですよ。あいつ、どこでプレーしているんだっけ?どこでもいいだろう、取り敢えず代表に戻って来るんだから、という感じ。

ダバディ 欧州と反対ですよね。

鈴木 日本には日本のやり方があって、それで強くなるのかもしれないけどね。

千田 日本は体格や動きながらの技術の差を、勤勉さで埋めている感じですよね。だからJリーグの試合を見ていると、メリハリがあまり感じられない。ずっと同じテンポで試合が流れていく。例えば、歌舞伎だと見栄を切る場面とかあるじゃないですか。あの場面では、他の選手が全員止まっていて、この選手が見せるとか。欧州なら、この選手が右サイドで持ったらドリブルで行くとかね。そうやって取り得がはっきりしている選手がたくさんいるじゃないですか。

加部 それはサポーターも一緒。ずっと同じ調子で歌い続けている。

千田 そう、そうなんですよ。

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