【特別座談会】トルシエ、ジーコ、オシムの通訳が語る「日本代表は本当に強くなったか?」

2016年05月20日(Fri)10時41分配信

text by 加部究 photo Editorial Staff
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日本の育成年代のサッカーは完全に“習い事”

鈴木 これは個人的な感想なんですけど、日本で一番凄いと思ったのはジョージ小林なんですよ。彼が日本代表のユニフォームを着て、ハンブルガーSVのウベ・ゼーラーと戦ったのを見て、この人凄い、と本当に思った。ブラジル生まれでブラジル育ち。同じ日本人の血しか流れていないのに、どうしてこんなに凄いの、感覚が違うの、と思ったんですよ。

加部 結局血より環境ということになりますよね。

鈴木 セルジオ越後さんもそうだけど、日本人にも出来ないわけではない。でも育つ環境が違うと、あんなに出来てしまう。

千田 社会がそうなっているからじゃないですかね。つまり日本は社会全体が勤勉なスタイル。指導者もうるさく教えるだろうし。例えば、ボールが1つあって子供が2人いたら、海外なら1対1をやる。でも日本人はパス交換とか。そういう文化の違いがあるというのは聞いたことがありますね。

トニー オレが小さい頃は、通学する時にボールがあれば、誰か1人がドリブルを始める。それで他のヤツは、そのボールを奪おうとする。奪われたら、返せ、この野郎。それが面白い。授業中は隠しておくけど、また授業が終われば何十人で延々と続ける。日本は何時から何時までサッカーですよ、と完全に習い事だから。雨が降ると面倒くさいなあ、と。

鈴木 そうね、しかもみんな同じ年代でね。

加部 だからたぶんメッシみたいな子供がいると、たぶんいくらドリブルがうまくても、ボールを離さないし、守備もしないから怒られちゃう。

千田 ほぼ持ち過ぎと言われますよね。

ダバディ ハリルホジッチ監督が、一番日本にないのは9番だって言っている。ペナルティエリアの中で嗅覚、ポジションセンスを持ったタイプ。判り易く言えば、フィリッポ・インザーギとか、ダボル・シューケル。必ずしもリフティングは上手くないかもしれないし、左足しか使えないかもしれないけれど、いつもいいところにいて、アイスホッケーやバスケットのリバウンド王みたいに点を取る。日本には、そういう選手がいない。欧州ではいろんなスポーツをやるんですよ。

 例えば、フランス代表GKのバルテズは昔ラグビーをやっていて、途中でサッカーに転向した。当時フランス代表には、バルデール・ラマというGKがいて、専門的な技術を見ればラマの方が全然上だった。でもバルテズは、ハンドボールやアイスホッケーのGKのようなポジションを取り、足もとも上手だった。

 それが現代サッカーにフィットしてラマが勝てなかった。日本には、そういう違う発想を持ち込めるタイプが出て来ない。

千田 実際にオシムさんも、バスケットやハンドボールの戦術を参考にしていましたからね。

鈴木 ブラジル人は、ジーコやペレにしても、GKをやらせても上手いんですよ。でも日本はサッカーだけ上手い子が多いですよね。それって、どうなの?という気がしますよね。

ダバディ センスだよね。プラティニや錦織だって、物凄いアスリートというわけではない。今ならみんな中村俊輔のプレーとかを見てマネをするでしょう。

加部 でも日産スタジアムじゃ、マネをしたいスタンドからピッチが遠過ぎて、プレーもよく見えないですよね。

ダバディ そうね、建築も含めてサッカー文化です。

千田 それに習い事で土曜日にサッカーをやっている子はJリーグを見に行かない。

加部 そう。スタンドにプレイヤーが少ない。

トニー イングランドでは、プロのリーグ戦が土曜日の午後3時キックオフと決まっていて、アマチュアでプレーする人たちは日曜日にサンデーリーグ。プレーをする日と見る日が分かれていた。

加部 日本もその棲み分けを考えた方が良いですよね。日曜日に開催したら、子供も指導者も見に行けない。だから僕もJ2やJ3には、ほとんど行けていません(笑)。きょうは、みなさん、ありがとうございました。

(司会・進行・文:加部究)

【了】

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