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リバプールからサッキのミランへ。4-4-2戦術の発展と、ゾーンディフェンス+プレッシング【西部の4-4-2戦術アナライズ】

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

機械的でシンプル、ある意味現代的だった攻守

 現在の読者にとっては、リバプールよりもむしろそれ以前のサッカーのほうが馴染みがないだろうから補足すると、守備は基本的にマンツーマンだった。中盤ではゾーンで守るケースもあったが、実質的にはマンツーマンと変わらない。なぜかというと、例えば3人のMFのうち1人はマークする相手が決まっていて、残りの2人が相手の2人をみるので、ゾーンといってもほぼマンツーマンと変わらないわけだ。

 リバプールの場合は、MF 4人がフィールドの横幅をカバーする。ボールに対するチャレンジと、その斜め後方でのカバーリング。4人が防波堤として機能していて、マークは受け渡し。攻撃はある程度の自由度はあっても自分のポジションの上下動である。

 特定の選手(プレーメーカー)にボールを集めることもしていない。リバプールの特徴はキャラハンに代表されるようなグラウンダーの縦へのパスだった。空いているかぎりは間髪入れずに縦へつなぐ。誰かを経由しての攻撃ではなく、誰からでも素早く前線にフィードした。

 縦につけてサイドへ、サイドからもシンプルに中へ。手数をかけない、いわゆるダイレクトプレーだが、それを高い精度で行っていた。それ以前の偉大なチームと比べると、選手の特徴に依存しないリバプールの攻守は機械的でシンプル、ある意味現代的。半面、個性や意外性はさほどない。

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