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サッキ革命を超えた、技巧派の復権。DFラインの後退、ポゼッションとブロックの対峙へ【西部の4-4-2戦術アナライズ】

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

狭いスペースを苦にしないMFの出現

コンパクトなブロックを無効化するテクニックを備えていたジネディーヌ・ジダン
コンパクトなブロックを無効化するテクニックを備えていたジネディーヌ・ジダン【写真:Getty Images】

 攻撃側からスペースと時間を削り取ったコンパクトなゾーンの中でも、それを苦にしないMFも出現してきた。ジネディーヌ・ジダンは並の選手なら受けられないはずの狭いスペースで平然と受け、奪われるはずの状況でも奪われずにキープした。ただキープし、短いパスを味方へ渡すだけで、守備側はパニックに陥っている。スペースを縦横に圧縮するということは、ディフェンスラインの裏と逆サイドのスペースがそのぶん広がっていくことを意味している。奪えるはずの状況で奪えず、さらに囲んでもボールを逃がされしまえば、すでにスペースのないはずの中盤ですら穴が空いてしまっている。

 裏と逆、2つの大きな弱点を抱えたまま、効力のないプレスをかけ続けるのは守備側にとって悪夢に違いない。守備戦術が規則的であればあるほど効果を増すはずが、ジダン1人の存在によって全く逆効果になる奇妙な現象が起こってしまっていた。ジダンは別格としても、それに準ずる能力を持った選手が次々と出現するに至って、ハイラインの4-4-2はリスクが増大していった。

 守備側はディフェンスラインの後退を余儀なくされた。パイオニアのミラン方式は、ハイラインによる高い位置でのボール奪取が攻撃力に直結するのが最大のメリットだったのだが、もはやリスクのほうが大きくなってしまった。そこで、フラットなディフェンスラインとコンパクトな陣形はそのまま維持しながら、全体を後方に下げてライン裏のスペースを消したのだ。

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