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豪州、代表不人気と国内リーグの”格差拡大”。問い直されるサラリーキャップの意義

text by 植松久隆 photo by Getty Images

リーグの”格差拡大”に繋がる「フルタイム・ゲストプレイヤー制度」

三浦知良
キング・カズもゲストプレーヤー制度でプレーした【写真:Getty Images】

 もう一つ、特筆すべきは、6月27日にAリーグが発表した来季から導入される「フルタイム・ゲストプレイヤー制度」。これまでもAリーグには、ロマーリオ、三浦知良、記憶に新しいところではダビド・ビジャなどの有名選手が利用した最大14試合プレー可能なゲスト・プレイヤー制度が存在していた。

 来季からはこれまでの試合数制限を撤廃、この枠で1名の選手獲得をシーズン通してサラリーキャップの範囲外で認めることになった(筆者注:この枠に該当する選手には、主にマーケティング面でのリーグ全体と所属クラブへの貢献が可能かなどの、事前にFFAが設定する判断要件を満たすことが条件になる。そして、必要に応じては、その対象 選手の獲得にFFAが資金的な支援、助成を行うこともできる)。

 これには、「事実上、3枠目のマーキー制度(編註:マーキー制度はオーストラリア国籍の選手、外国籍選手を各1人ずつサラリーキャップに関係なく保有できる制度)に過ぎない」「すべては、(金満と揶揄される)メルボルン・シティのティム・ケーヒル獲得の地ならしだ」などなど、豪州のフットボール世論が鋭く反応。”不公平感”を漂わせる意見が相次いだ。

 10クラブ中既存の2つのマーキー枠を使い切る財力を持つクラブが半分しかない現状で、サラリーキャップという金銭的な縛りを与えて機会の均等を謳いながら、その制度の例外となるマーキー枠を拡充して、富めるクラブへ更なる恩恵を与えることへの矛盾を感じるファンが多いことの証だ。

 また、健全経営の小クラブや慢性的な経営難を抱えるクラブにとっても、サラリーキャップ制によって守られているはずの「機会の均等」から外れた「不公平」は様々な不利益を生みかねないとの危惧もあるだろう。

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