フットボールチャンネル

モウリーニョの冷酷なるマンU改革。“コールド・ワン”が目指す勝利最優先の復活劇

text by 山中忍 photo by Getty Images

強豪復活へ。勝利を最優先に目指すモウリーニョの冷酷さ

ギグス
退任したライアン・ギグス氏【写真:Getty Images】

 ファンの間には、サー・アレックス・ファーガソンの監督勇退時から「後継ぎはモウリーニョしかいない」との声もあった。その彼らの耳に、クラブの英雄で前助監督のライアン・ギグス離任を「彼の望みは私に与えられた仕事だった」とするモウリーニョの言葉は冷たく響いたかもしれない。

 しかし、またしても優勝争いに絡めなければ「古豪」と呼ばれ始めてもおかしくないファーガソン後4年目を前に、「正監督初心者」と「優勝請負人」の二者択一となれば大半が後者を歓迎するはずだ。

 新監督曰く「忘れ去るべき」3年間を過ごしたマンUは、伝統のカラーよりも先に強豪のステータスを取り戻す必要がある。威厳と自信を失った集団には勝利が最高の特効薬。その勝利とは、そもそもモウリーニョがプレミアの世界で「スペシャル・ワン」の自称を周囲に認めさせた「媚薬」でもある。

 昨季チェルシーで「選ばれし者」としての尊厳が傷ついている当人にとっても、「幸せなる者」の仮面などではなく勝利こそが必要だ。

 マンUでの監督職を、「誰もが望む仕事」と言いつつも「夢の仕事ではなく現実にすぎない」と説明するモウリーニョは、プレミアでの新たな「現実」の中にリーグ優勝を見据えている。勝つために冷酷になれる新監督を得たマンUファンも。強豪復活への第1歩は既に刻まれている。

(取材・文:山中忍)

【了】

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top